日本小児神経学会

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Last Update:2023年7月3日

小児神経Q&A

Q95:ドラベ症候群の特徴や治療方法、日常生活での注意点について教えてください

A 生後1歳未満に、発熱に伴うけいれんが、それまで正常だった乳児に起こり、その後もけいれんが頻繁におこることが特徴です。発作は長く持続する傾向があり、てんかん重積に進展しやすいです。てんかん重積や突然死のために、思春期までに約15%が亡くなると報告されています。1歳をすぎると、他のタイプのてんかん発作を起こすことがあります。徐々に発達が伸び悩み、多動や不注意、自閉傾向などの行動特性がみられることが多いです。ナトリウムチャネル遺伝子SCN1Aの異常が8割程度の患者さんでみられ、他の遺伝子異常も稀にみられます。

てんかん

 半身または全身のけいれんが最初の症状です。発熱、入浴などの環境温度の上昇、予防接種で誘発されやすいですが、誘因がなく無熱性に起こることもあります。5分以上続くてんかん発作(てんかん重積)も多いです。1~5歳頃から、覚醒中に四肢をビクっとさせるミオクロニー発作や、一瞬力が抜ける脱力発作、数秒間ぼんやりする欠神発作など、他のタイプのてんかん発作が現れることがあります。けいれん重積型急性脳症や突然死による死亡が多く、てんかん重積の予防が治療の最優先事項です。学童期以降には、てんかん発作は軽減する傾向があり、てんかん重積も起こしにくくなります。

てんかん以外の症状

 1歳以降に発達の進行が遅くなり、軽度から重度の知的障害を認めます。学童期になると多動や不注意、自閉傾向などの発達行動面の症状が、学校などの社会生活に影響を及ぼします。手先はあまり器用ではなく、不安定な歩行などの運動障害もみられます。

診断

 発達が正常の乳児が発熱に伴ってけいれんを起こすため、最初は熱性けいれんと間違われることがあります。ドラベ症候群は発症年齢が3か月頃~1歳未満(平均5~6か月)と、生後6か月以降に発症することが多い熱性けいれんに比べて早いこと、微熱や入浴後など、高熱でもないのにてんかん発作を起こすこと、てんかん重積や群発を頻繁に繰り返すことなどが特徴です。発症当初は脳波検査で異常がなく、頭部MRIその他の検査にも異常を認めません。保険診療でのSCN1A遺伝子検査が可能で、ドラベ症候群が疑われる場合は検査を受けることをお勧めします。ドラベ症候群と診断がつくと、より効果が高いと思われる治療や、逆に避けた方がよい治療がわかります。ただし、約2割はSCN1A遺伝子変異を認めないため、臨床症状による診断も重要です。

治療

 バルプロ酸、クロバザム、スチリペントールを組み合わせた治療や、トピラマート、臭化カリウムなどを使用します。カルバマゼピン、ラモトリギンなどのナトリウムチャネル阻害薬は発作を悪化させる可能性があるため使用を避けます。発作が抑えきれずに多剤併用になることが多いですが、薬の副作用を避けるためにも、最小限に絞ることが望ましいです。ケトン食などの低糖質・高脂質の食事がてんかん発作の減少や神経発達症の症状軽減に有効なことがあります。
 てんかん重積の治療には、ジアゼパム、ミダゾラムなどの注射薬を使用します。ジアゼパム坐薬は吸収されるまでに時間がかかるため、てんかん重積をすぐ止める効果は期待できません。家庭でも使用可能な治療薬として、頬の粘膜から吸収されるタイプのミダゾラム溶液(ブコラム®)があります。ご家族が投与できるよう使い方に慣れておき、常備しておくことが望ましいです。

日常生活での注意点

  • 高気温での外出や炎天下での活動を避ける、保冷剤を収納できる衣服を活用する。
  • 入浴によるけいれん誘発がある場合は、湯温を下げる、長湯を避ける、シャワー浴にする。
  • 発熱時には早めにジアゼパム坐薬を使用する。
  • 光の点滅など、発作が誘発される刺激を避ける。

 てんかん発作が起こるのを防ぎきることは難しいですが、これらの工夫が発作を減らすのに役立つかもしれません。また、多動や衝動性、歩行の不安定さもあるので、転倒・受傷に注意が必要です。

(2023年2月 日本小児神経学会広報交流委員会QA部会)

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