日本小児神経学会

会員専用ページログイン
Last Update:2019年7月3日

小児神経Q&A

Q87:2007年以降発売の新しい抗てんかん薬について教えてください。

 新しい抗てんかん薬(新規抗てんかん薬)の特徴として、作用機序が多様であること、抗てんかん作用以外の副次作用を有する薬剤が多いこと、などが挙げられます。小児でよくみられるてんかんから難治てんかんまで、様々な発作に有効性が期待できますが、薬剤相互作用も複雑で、意外な副作用に悩まされることもあり、処方には専門的な知識が必要です。
 

ガバペンチン 

 ガバペンチンは焦点発作に対して他の抗てんかん薬と併用して使用される薬剤です。各種受容体や主要なイオンチャネルとは結合せず、既存の抗てんかん薬とは異なる機序で抗けいれん作用を発現するとされています。投与初期に眠気やふらつきがあらわれることがありますが、副作用が比較的少なく、忍容性の高い薬剤です。また他の抗てんかん薬との相互作用が少ない利点があります。同じ成分で別の商品になりますが、レストレスレッグス症候群の治療にも用いられます。

トピラマート

 トピラマートも焦点発作に対して他の抗てんかん薬との併用で用いられます。ナトリウムチャネル、カルシウムチャネル、AMPA/カイニン酸型グルタミン酸受容体、GABA受容体などを介した幅広い作用機序が特徴で、単剤で効果不十分な部分発作に追加することで発作の改善が期待されます。眠気を来すことが比較的多いのでゆっくりと少しずつ増量していきます。気分の落ち込みなど、情緒/行動に影響する場合があります。また尿路結石、発汗抑制の副作用にも注意して下さい。

ラモトリギン 

 ラモトリギンはナトリウムチャネルに作用し、全般発作にも焦点発作にも有効性を示します。部分発作、強直間代発作、Lennox-Gastaut症候群には他剤との併用療法ですが、定型欠神発作には単剤で使用することができます。もっとも注意すべき副作用は皮膚症状を主体とするアレルギー反応で、時に重篤化します。バルプロ酸と併用する場合は特に注意しながらゆっくりと増量していきます。例外もありますが、気分に対してはよい方向に作用することが多く、情緒/行動の問題を併存する小児てんかんには有用な薬剤です。

レベチラセタム

 レベチラセタムはシナプス小胞のタンパク質(SV2A)に結合することにより抗てんかん作用を示すとされる薬剤です。幅広い発作のスペクトラムに有効で、焦点発作には単剤で使用することもできます。アレルギー反応などの副作用が少ないので最初から目標量で開始することができ、様々な小児てんかんの第一選択薬として処方されることが多くなっていますが、時に不機嫌やイライラ、眠気といった副作用が出現するので注意が必要です。

ぺランパネル

 ペランパネルはAMPA型グルタミン酸受容体を介した抗てんかん作用を示す薬剤で、半減期が長く、1日1回内服の用法となっているのが特徴です。イライラ、めまい、眠気といった副作用の頻度が多く、またカルバマゼピン、フェニトインとの併用で、血中濃度が著しく低下しますので、処方には工夫が必要です。しかしこれまで多剤併用で効果不十分であった難治てんかんにも時に有効な場合があり、焦点発作、強直間代発作の併用療法として用いられます。

ラコサミド

 ラコサミドは焦点発作に対し単剤で使用することができる薬剤で、カルバマゼピンやラモトリギンとは異なる機序でナトリウムチャネルに作用し、抗てんかん作用を示します。眠気やめまいの副作用が問題となることがありますが、カルバマゼピンやラモトリギンと異なりアレルギー反応がほとんどみられず、また情緒/行動への影響もないことから、小児にも安全に使用できます。今後レベチラセタムと並んで、様々な焦点発作への第一選択薬として活躍が期待される薬剤です。
 
 ほかに、2012年からDravet症候群に対してスチリペントールが、2013年からLennox-Gastaut症候群に対してルフィナミドが使用できるようになっています。それぞれ特徴的な作用/副作用がありますので主治医の先生によくお話を聞いて下さい。

黒田文人(金沢大学附属病院小児科)2019年5月1日改変

このページの先頭へ