日本小児神経学会

会員専用ページログイン
Last Update:2022年12月21日

小児神経Q&A

Q19:ローランドてんかんは治るのでしょうか?

 「ローランドてんかん」は、「中心側頭部棘波を示す自然終息性てんかん」という長い病名の別名です。小児期の代表的な経過良好なタイプのてんかんで、思春期以降は自然におさまります。従来は「中心側頭部に棘波をもつ良性小児てんかん」と呼ばれ、特別な脳障害の無い発達が正常な子どもで、3歳から14歳にかけて、とくに5歳から8歳に多くおこります。「良性」ということばをてんかんに使うのはふさわしくないという意見があり病名が変更されました。一時は「中心側頭部に棘波を示す小児てんかん」という病名も使われました。

 この病気では、主に片側の顔面、手や腕がピクピク・ガクガクとする短いけいれんが特徴的で、睡眠中とくに寝入りばなや朝起きる前に起こります。このとき口の周囲の異常な感覚があり、よだれを流し、意識はあって発作中のことをよく覚えているのに、発作の最中にはしゃべることができなかったということがよくあります。発作が発展すると全身けいれんになりますが、このような全身けいれんになって初めて発作に気づかれることもあります。通常発作回数は少なく、合計でも数回以下の患者さんが大半です。夜ふかしをしたり、生活とくに睡眠のリズムが乱れたときに発作が起こりやすくなることもあります。発作の持続は数分以下のことが多く、発作が止まらず30分以上の長時間持続することはあまりありません。病名に「中心側頭部棘波」とありますが、これは、脳波で大脳の中央部から横にかけてあるローランド溝という構造の付近から特徴的なてんかん性異常(ローランド棘波)が出現することをさしています。ローランドてんかんという別名もこのことにちなんでいます。ローランド棘波は睡眠中に多発しますから、このてんかんの脳波検査ではとくに睡眠時記録が大切です。

 経過は良好で、ほとんどの患者さんで思春期以降に自然に発作が止まるとともに脳波のてんかん性異常も消えます。通常は知能にも影響しませんが、一部の患者さんで行動の問題や神経発達症を合併することはあります。治療は、ごくわずかな数の短い発作が起きただけであれば、服薬を開始しないで自然に治るのを待つこともできます。

 はじめは一見この種の経過良好のてんかんのような病状であっても、実は脳病変が隠れていたりすることがあり、また脳波とくに睡眠時脳波が極端に悪化して、覚醒時に意識消失や脱力をする発作など別の種類の発作が出現したり、知能、言語や行動などに悪影響が及ぶことも例外的にありますので、ローランドてんかんの診断には慎重であることが必要です。

2022年12月 日本小児神経学会広報交流委員会QA部会

このページの先頭へ