日本小児神経学会

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Last Update:2022年12月14日

小児神経Q&A

Q10:重症心身障害児に伴うてんかんについて教えて下さい。

重症心身障害児では、てんかんの合併は60~70%と極めて高頻度です。一般人口におけるてんかん罹患率は0.5~0.9%ですから、約100倍ということになります。そして、そのほとんどが明らかな脳の病変や構造異常を背景とする症候性てんかんに分類されます。それ故、治療抵抗性のてんかんが多く、約30~40%は月1回以上の発作を示す難治性の経過をとるとされています。そして、てんかん発症は小児期早期がほとんどで、その多くが成人期までキャリーオーバーしており、長期に渡っててんかんが日常生活を制限しているばかりでなく、障害の増悪にも少なからず関与していると思われます。

重症心身障害児のてんかんの診断や治療は通常のてんかんと基本的には変りません。まず、診断に関しては、発作症状の観察が最も重要になります。しかし、重症心身障害児では四肢の麻痺や変形・拘縮などがあり、運動発作(けいれん)であってもてんかん発作の確認は難しく、異常筋緊張亢進などを発作と誤認することもしばしばあります。また、精神遅滞があることで自覚発作を表現できない、表情が乏しく意識減損発作(複雑部分発作)が解りにくいなど難しい点が多々あります。てんかん発作は日常活動と明らかに異なる発作性のエピソードで、かつ、繰り返すことが特徴です。このことを念頭において日常観察することが重要で、てんかん発作が疑われた場合には脳波所見も参考にして発作型を診断する必要があります。複数の発作を有していることも稀ではありません。

小児てんかんの多くは年齢(脳の発達)に伴って発症し経過する特徴があります。重症心身障害児のてんかんにおいても年齢に伴う変化は少なからず認められ(特に思春期、青年期)、年齢発達を考慮した長期的戦略を立てて対応することが重要と考えます。

2022年12月 日本小児神経学会広報交流委員会QA部会

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