日本小児神経学会

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Last Update:2023年1月10日

小児神経Q&A

Q86:検査時の鎮静剤使用について教えてください。

 

 小児神経疾患の診断に際して脳波検査,神経生理検査,頭部画像検査などがおこなわれます。検査にあたっては原則として鎮静剤を服用しないでおこなうことが望ましいとされていますが,小児,特に幼少児では検査中の体動を抑える必要がある場合,鎮静剤を使用しなければならないことも少なくありません。また,「小児てんかん」の診断のための脳波検査では,覚醒時と睡眠時の両方の所見を得ることで正確な診断に結びつくと考えられています。外来診療の限られた時間で自然睡眠の状態が得られない場合は鎮静剤を用いることもあります。

鎮静剤使用では呼吸循環抑制などの作用がでることもあり安全に行う必要があります。鎮静剤の使用にあたっては,担当医より検査の目的と鎮静剤使用や注意点,リスク,検査中の体制などの説明を受けて相談の上検査をうけてください。あわせて,検査終了後やその後の帰宅にあたっては意識・覚醒・呼吸状態を十分確認することに注意し,帰宅後の連絡方法なども確認してください。

内服の鎮静剤ではトリクロホスナトリウム(商品名トリクロリールⓇシロップ)が,坐剤・注腸液としては抱水クロラールの坐剤や注腸液(商品名エスクレⓇ坐剤,エスクレⓇ注腸キット)が用いられることが多く,トリクロホスナトリウムは「脳波・心電図検査等における睡眠」として,抱水クロラール坐剤や注腸キットは「理学検査時における鎮静・催眠」として効能効果の保険適応があります。担当医が患者さんに合った容量を処方しますが薬の効き方などは個人差などがありますので,睡眠状態やふらつきなどが長く続く場合があります。以前の検査で効き目が強かった方などは担当医と容量を相談した方が良いでしょう。また,エスクレⓇ坐剤はゼラチンで包まれていますのでゼラチンアレルギーがある場合は使用しない方が良いので申し出てください。

MRIなどの画像検査では特に体動を抑える必要があり,小児で限られた時間でおこなう場合は短時間作用の静脈麻酔を用いることも少なくありません。静脈麻酔でも呼吸循環抑制などの作用があり,多くの場合は医師の立ち会いのもとでおこなわれますが,MRI装置はトンネル構造になっており間近で患者さんの状態を直接観察することは多くの場合困難です。検査前後の注意点(経口摂取制限時間や検査後の観察)や検査中の体制など十分な説明をうけ,内服や坐剤・注腸液と同様,検査の目的とリスクを担当医と十分相談した上で検査を受けるようにしてください。

 脳波等神経生理検査時の鎮静については,日本小児神経学会から「脳波等神経生理検査時の鎮静における医療安全に関する提言・指針」が2019年にだされています。
MRI検査の鎮静については,「MRI検査時の鎮静に関する共同提言」改訂版が2020年に日本小児科学会・日本小児麻酔学会・日本小児放射線学会の3学会合同でだされています。
それぞれ参考にしてください。

2022年12月 日本小児神経学会広報交流委員会QA部会

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