日本小児神経学会

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小児神経専門医制度の改定について

日本小児神経学会 専門医委員会
委員長 後藤知英

2025年7月18日、小児神経専門医制度は日本専門医機構(専門医機構)が指定するカテゴリー1の小児神経領域サブスペシャルティ専門医制度として承認されました。承認に伴い、新しい専門医制度(以下、「新制度」とします)への移行が開始されます。現在の制度(以下、「旧制度」とします)との違い、移行手順について概要を以下に掲載します(運用開始直後のため、今後、修正・改訂がある可能性があります)。

1.専門医制度について(「整備基準」)
専門医機構の指針に基づき、日本小児神経学会が作成し専門医機構に審査・承認を受けた「サブスペシャルティ領域専門研修整備基準 小児神経領域」(「整備基準」)による運用となります。運用開始直後のため、今後、細かい修正がある可能性があります。専門医機構の規定により5年に1回、制度の見直しを行います。

  【サブスペシャルティ領域専門研修整備基準 小児神経領域】 
   PDF版:小児神経領域サブスペシャルティ領域専門研修制度整備基準

また、上記の「整備基準」に基づき改訂された「小児神経専門医制度規則」が2025年12月23日の臨時社員総会で審議され、承認されました(内容は、「整備基準」内からの抜粋と考えてください)。
専門医資格取得を目指す専攻医の先生方、専門医資格を更新する方、専攻医の指導にあたる方は必ずご一読ください。

  【小児神経専門医制度規則】 
    PDF版:専門医制度規則2025年12月23日改定版

2.専門医制度に関わる用語の改訂
旧制度で使用されていた用語は、専門医機構が使用するものと異なっているものが多数あります(例えば、研修認定施設→専門研修基幹施設、など)。以下のリンクに新制度・旧制度での新旧対応表を示しますので、混乱のないよう、あらかじめ参照してください。整備基準内でも古い用語が使われている部分がありますが、今後、修正して統一します。

  【用語の改訂】
   PDF版:用語の改訂

3.旧制度と新制度の違い、移行措置
大きく変更される点は以下の通りです。

1) 研修期間の変更
研修期間は、旧制度では5年間でしたが、新制度では3年間になります。
旧制度では、小児科専門研修の期間も小児神経専門研修基幹施設(研修認定施設)であれば小児神経専門研修の期間に含めることができました(2つ以上の専門医制度の研修を同時に行うことができる:連動研修といいます)が、新しい制度では連動研修は認められなくなります(小児科研修が修了してから、3年間の小児神経専門研修を行う)。
新制度では、小児神経専門研修を開始する時点で、小児科研修が修了していれば、小児科専門医の資格を取得していなくても問題ありません(ただし、小児神経専門医試験の受験申請をする時までに取得していなくてはなりません)。
すでに旧制度で研修を始めている専攻医の方々の対応については、次項を参照してください。

2) 研修期間の認定について
当面、旧制度で研修した場合でも専門医試験を受験することができます。
旧制度での研修期間の認定(旧制度での専門医試験の受験)
すでに旧制度での研修を始めている場合、当面、旧制度での研修による受験申請を認めます(連動研修期間を含めて5年間の研修期間として認めます)。ただし、2026年4月1日以降は旧制度による研修開始は認めません。
すなわち、2026年3月31日までに研修を開始した専攻医は旧制度に基づいた研修実績(5年間)での申請を行うことができます。この場合、得られる資格は小児神経学会認定の小児神経専門医であり、専門医機構認定にはなりません(なぜなら旧制度は専門医機構に承認された研修制度ではないので)。専門医機構による認定は初回の更新時(合格して5年後)、新制度での更新基準を満たした場合からとなります。
2024年3月31日までに小児科専門研修を修了しかつ2024年4月以降から小児神経専門研修施設で3年間の研修を行うことができた場合は新制度での研修実績として申請することを推奨します(この場合、次項で示す新制度での研修として申請できるので)。
研修期間だけでなく、受験に必要な研修単位、学会発表、論文業績などについては、旧制度で規定されているものを準備してください。ただし、小児神経専門医試験(提出症例の審査や試験形式など)などについては、旧制度・新制度にかかわらず新制度によるものを使用します。

●新制度での研修期間の認定(新制度での専門医試験の受験)
2024年4月1日までさかのぼって研修実績として申請を認めます(2024年4月1日から、新制度での研修を始めたとみなしてよい)。
すなわち、2024年3月31日までに小児科専門研修を修了しかつ2024年4月1日以降に小児神経専門研修施設で研修を開始した専攻医は、新制度での研修実績(3年間)の申請を行うことができます。この場合、小児神経専門医試験に合格した時点から専門医機構認定の小児神経専門医となります。受験にあたっては、新制度で規定されている学会発表や論文業績などを準備してください。

【重要】2024年4月1日にさかのぼって新制度での研修認定を希望する専攻医は、
2026年3月31日までに、研修開始届を提出してください。

【研修開始届】
 Word版:研修開始届
 送付先(Wordで記入し印刷して自筆署名の上、PDFファイルとして送ってください)
     日本小児神経学会 専門医委員会
     senmoni@childneuro.jp

3) 専門医資格更新基準の変更
専門医機構が示す更新基準の内容に沿ったものとなります(現在の小児科専門医の更新と同様になります)。
交付される研修単位の変更
旧制度では、例えば小児神経学会学術集会では出席は8単位・筆頭発表は4単位、「脳と発達」での筆頭著者は12単位、などと規定されていましたが、どの学術集会でも講習会でも、あるいは学会発表でも論文業績でも、全て1単位となります
  【新制度での研修単位一覧表】
   PDF版:認定研修単位一覧表-新制度

上記の出席あるいは発表の単位のほか、新たに「共通講習」「領域講習」で研修単位を取得することになります(専門医委員会が事前に認定した講習・講演・E-learningなどについて、1つの講習・講演につき原則1単位)。取得できる講習・講演については、2026年4月以降から取得が可能となるよう、整備を進めていきます。

●更新基準の変更
5年ごとの専門医資格の更新には、以下の条件が必要になります。
(1) 小児神経専門医試験合格後あるいは前回の更新後、継続して本学会の会員であること。
(2) 5年毎の更新で以下の①~④の合計が50単位以上あること。
    ①診療実績
    :50症例の症例要約リスト(10単位)。
    ②共通講習
    :医療安全講習会・感染対策講習会・医療倫理講習会などで最大10単位(日本小神経学会が
     承認認定したものだけでなく、基本領域に共通講習単位として提出した単位を基本領域お
     よび本学会専門医の更新に重複して使用してよい)。
    ③領域講習
    :学会が出席単位を認定している年次学術集会・地方会・研究会で開催される講習や講演の
     うち、これらの会が事前に学会に申請し学会が事前に承認認定した講習・講演(1つの講
     習あるいは1つの講演に対し1単位)、あるいは日本小児神経学会が作成したE-learningな
     どで20単位以上。
    ④学術業績・診療以外の活動実績
    :学会出席、学会発表、論文発表など学術活動で0~10単位以上。

●専門医資格更新の移行措置
新しい更新基準に基づく専門医資格の更新は、2027年度の更新者から順次、開始します(この更新をもって、現在の小児神経専門医は順次、専門医機構認定の専門医となります)。
2026年度の更新者は、旧制度での更新となります(2031年度の更新から専門医機構認定の専門医となります)。
小児科専門医が専門医機構認定となり新しい制度へ移行した時と同様、専門医機構の提示する方法(初年度は旧制度の更新基準が4/5、新制度の更新基準が1/5、次年度はそれぞれ3/5と2/5、…、5年目に新更新基準が5/5)に沿って基準の配分を設定し、順次「日本専門医機構認定 小児神経専門医」として認定していきます。
例えば、初年度(2027年度の更新)の更新者は、以下の配分で合計50単位以上が必要になります。

【新制度分】 20%、合計10単位以上
    診療実績:10 症例の症例要約リスト(2単位)。
    共通講習:最大2単位。
    領域講習:4単位以上。
    学術業績・診療以外の活動実績:0~2単位以上。
【旧制度分】 80%、合計40単位まで
    最近の5年間に以下の合計が40単位あること(このうち、16単位以上は最近5年間に本学会
    学術集会、小児神経学セミナー、学会が認めた地方会または国際関連学会(国際小児神経学
    会(ICNA),アジア大洋州小児神経学会(AOCNA))に出席した合計であること)。
    なお、学会が認めた本学会学術集会期間中の教育講演、海外演者講演、特別講演等への出席
    単位は、必要な単位(16単位以上)に含めることはできない。本学会学術集会出席が1回以
    上あること。
    a) 論文発表
    筆頭者の場合 学術誌8単位,商業誌6単位。
    ただし脳と発達、Brain & Development、Brain and Development Case Reportsは12単
    位とする。
    連名者の場合 学術誌2単位、商業誌1単位。
    ただし脳と発達、Brain & Development、Brain and Development Case Reportsは3単位
    とする。内容は小児神経学に関したものとし、論文発表と学会発表が同一内容の場合は重複
    して数えない。
    b) 学会発表
    筆頭者の場合 本学会学術集会4単位、地方会3単位、関連学会3単位。
    連名者の場合 本学会学術集会1単位,地方会1単位,関連学会1単位。
    ただし同一学会1演題についてのみ。
    c) 学会出席
    本学会学術集会8単位、地方会5単位。
    関連学会(本学会で承認した学会)2単位。
    小児神経学セミナー8単位。
    その他、本学会に申請し承認された集会2単位。
    d) 小児神経学セミナーの講師、学術集会、関連学会での教育講演等演者8単位。
    e) 脳と発達、Brain & Development、Brain and Development Case Reportsの査読1単
    位。
          【旧制度での研修単位一覧表】
            PDF版:認定研修単位一覧表-旧制度

以下、
2年目(2028年度の更新)
【新制度分】 40%、合計20単位以上
【旧制度分】 60%、合計30単位まで
3年目(2029年度の更新)
【新制度分】 60%、合計30単位以上
【旧制度分】 40%、合計20単位まで
4年目(2030年度の更新)
【新制度分】 80%、合計40単位以上
【旧制度分】 20%、合計10単位まで
5年目(2031年度の更新)以降
【新制度分】 100%、合計50単位以上
【旧制度分】 0%
となります。

4) 指導医資格の定義の変更、指導医資格の認定
従来、日本小児神経学会では、専門研修基幹施設(研修認定施設)の専門研修統括責任者(指導責任者)のみを「指導医」として認定してきました。一方で、従来の規定による「指導医」ではなくても実際の現場で専攻医の指導にあたっておられる先生方は多数あり、このような方々を指導医と認定するのは他の学会では一般的なことです。このことから、一定の条件を満たす専門医の方を指導医として認定することになりました。
指導医として認定(あるいは更新)する要件は以下の通りです。
            ①所属する施設における常勤ないしそれに準ずる勤務実態を有すること。常勤に準ずる勤務
            実態を有するかは、日本小児神経学会専門医委員会が審査します。     
            ②専門医資格を取得し、少なくとも1回目以上の専門医資格更新を行ったもの。
            ③過去5年間に1件以上、小児神経学に関する学術業績があること。学術業績とは以下のも
            のを指します(筆頭でなく共同演者/共著者でもよい)。
            ・小児神経学会による研修単位が交付される会(小児神経学会の年次学術集会および地方
             会、研究会)での発表
            ・小児神経学に関する論文(査読の有無、言語を問わない)
原則として専門医資格更新の際に認定(および5年に1回の更新)を行いますが、移行措置(いずれ終了する可能性があります)として、
専門医資格更新前の審査認定も受け付けます
過去5年以上前でも専門医資格取得後に小児神経学に関する学術業績があるケースも申請可とします。
【専門医資格更新のタイミング以外で指導医資格の取得を希望される方へ】
     
移行措置として専門医資格更新のタイミング以外で取得した指導医資格は、有効期限は5年間ではなく、次回の専門医資格更新までとなります(専門医資格の更新ごとに申請と審査認定が必要)。
2023年1月13日の学会通達で、同日時点およびそれ以降「指導責任者」(旧・指導責任医)であった/である方は、移行措置としてすでに指導医として認定されています。これらの方については今回の改定による指導医として自動的に認定されますが、次回の専門医資格更新の際から5年に1回の更新が必要になります。

5) 日本小児神経学会認定「小児神経認定医」について
小児神経専門医制度は、もともとは日本小児神経学会独自の専門医制度でした。その後、いわゆる「2階建て」(基本領域の専門医資格を持った上で取得が可能な専門医制度)の制度となり、この際に1階部分は小児科専門医とリハビリテーション科専門医のみとなり、これら以外の方は小児神経専門医として認定できなくなりました。その方々のため、当時、日本小児神経学会は学会認定の「小児神経認定医」という制度を創設しています。
今回の専門医機構によるサブスペシャルティ領域専門医制度認定にあたり、「1階部分」は小児科専門医のみとなることになりました。リハビリテーション科専門医を持っておられる先生方については、大変申し訳ありませんが、今後「小児神経認定医」として認定させていただくこととなりました。
認定医の更新については新制度の専門医資格更新の基準と同じものになります。2027年度以降の更新からは順次、「(日本専門医機構認定ではない)小児神経学会認定 小児神経認定医」となります(2026年度の更新の方については、「(日本専門医機構認定ではない)小児神経学会認定 小児神経専門医」となり、5年後の更新から上記の小児神経認定医となります)。今後の移行と認定については「3. 旧制度と新制度の違い」内で示した「専門医資格更新の移行措置」と同じ形・同じ内容で対応します。

4.その他
●研修施設の認定と更新
研修施設は研修認定施設・研修関連施設から、それぞれ専門研修基幹施設・専門研修連携施設と名称が変更になります。それぞれの施設認定、認定更新については、今までの基準とほぼ変わりません。
●専門医試験受験に必要な条件
研修期間が3年間になるほかは、ほぼ変わりません(研修単位の提出が不要になります)。

冒頭でお伝えしました通り、運用開始直後のため、今後、修正・改訂がある可能性があります。
適宜、学会HPやメーリングリストでお伝えしていきます。
新しい専門医制度の導入にあたり、たくさんの大きな変化がございますが、どうぞ混乱のないよう、よろしくお願い申し上げます。

 

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