小児神経医が主に専門としている病気について
小児神経はどんな病気を診るのですか?
小児神経はけいれん、運動・知能・感覚・行動または言葉の障害など脳、神経、筋に何らかの異常がある小児の診断、治療、指導を行う科です。
ひきつけた、意識がおかしい、頭を痛がる、頭の形がおかしい、首のすわりや歩くのが遅い、ふらふらする、よく転ぶ、歩き方がおかしい、手足の力が入らない、まぶたが下がる、眼球の動きがおかしい、食べ物にむせる、ことばが遅い、しゃべらなくなった、手や首を変な風に動かす、落ち着きがない、お友達とのトラブルが多い、集団でみんなと同じ行動ができない、思ったことと違うことがおこると手がつけられないほど泣いたり怒ったりする、勉強についていけない、日中の居眠りが多いなどがある場合に脳・神経・筋肉の病気(障害)が疑われます。
4ヶ月健診、1歳6ヶ月健診、3歳児健診で頭の大きさや形の異常、発達の遅れを指摘された場合、多くの場合、精密検査は小児神経科医に紹介されます。
小児期に脳・神経・筋に障害がある(知的障害を合併する病気、自閉症、脳性まひなど)と診断され、その後あまり病院に受診することなく大きくなって、気になる症状が出た時や健康問題で心配がある場合も、遠慮なく小児神経医を受診してください。小児神経医は小児期から脳・神経・筋に障害のある人が成長後に(成人になって)かかりやすい病気についても専門にしています。
どこに行けば小児神経医に診てもらえますか?
小児神経の看板を掲示している病院はまだほとんどありませんが、成長発達期におこる脳・神経・筋の障害を診るのに必要な知識・技能・経験のある医師(小児神経専門医)は、全国で約1,000人おります。各地の小児神経専門医のいる病院と施設を小児神経専門医のいる施設に掲載していますので、脳・神経・筋の障害が疑われる症状がある場合には、その施設に電話、診察してもらえることを確かめ、予約が必要な場合には予約して受診して下さい。大部分の小児神経専門医は小児科の中で診療しています。
小児神経ではどのようなことが行われるのでしょうか?
受診されますと、受診されたきっかけとその症状のこれまでの経過を伺います。ご家族の構成やご家族の病気、受診された児を妊娠中の状況、生まれたときの様子、首が座った時期、歩き始めた時期や言葉を言い始めた時期、これまでかかった病気や接種した予防注射などについても伺います。身長、体重、頭囲を計測し、発達レベルを伺い、運動や遊びの内容などの行動を観察した後で、内科的な診察、いろんな姿勢や動作をとらせながら神経学的診察をします。
幼児や学童の集団での行動の問題では、1対1の診察だけでは分かりにくい場合があり、保育園や学校での様子については、保母さんや先生からの情報があると助かります。
診察の後、説明して同意を得た上で、血液検査(ウイルスや細菌感染の有無、内分泌・代謝異常症の有無、染色体異常の検査など)、脳の構造の異常や損傷を調べるCT検査、知的レベルを調べる発達検査、てんかん性異常波や意識障害の有無を調べる脳波検査などを行います。動くと検査できない場合には睡眠薬で眠らせる場合もあります。さらに脳の構造や損傷の有無を詳しく調べるMRI検査、脳の血管の異常を調べるMRA検査、脳の活動をしらべるSPECT検査、脳の周りに流れる液を調べる髄液検査、神経の伝わる速度を調べる電気生理検査、遺伝子の異常が疑われる場合には遺伝子検査などが行われることもあります。
これらの診察と検査で診断をつけた上で、治療や指導を行います。手術が必要な場合は脳神経外科に紹介します。眼科や耳鼻科の検査や治療が必要な場合にはそれぞれの科に、精神的症状が主な場合には精神科(児童精神科)に、療育やリハビリテーションが必要な場合には療育施設に紹介する場合もあります。保育所、幼稚園や学校との連携が必要な場合にはご家族の許可を得て連携をとる場合もあります。
けいれん発作が多いお子さんや嚥下や呼吸が上手に出来ないお子さんの場合、自宅や学校で必要な医療的支援を行い、緊急時の対応をします。また、知的障害、自閉症、脳性まひのある成人の方で、内科的・外科的疾患が疑われる場合には、治療がうまく行われるように各科との連携をとります。
医療費公費負担制度(小児慢性特定疾患やてんかんなど)申請、知的障害や肢体不自由に対する特別児童扶養手当の申請、身体障害者手帳や障害者年金申請などに必要な診断書を作成します。