日本小児神経学会

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Last Update:2019年7月3日

小児神経Q&A

Q12:てんかんに対する迷走神経刺激療法は小児にも使えるのですか?

 薬剤抵抗性てんかんに対する緩和療法として、迷走神経刺激療法(以下VNS)は、2010年に薬事承認が下り、日本では年齢や発作型の適用制限はなく、難治てんかんを持つ患児にとっても重要な治療の選択肢の一つと言えます。VNSは心臓のペースメーカーのような体内埋め込み型の刺激発生装置により左頚部の迷走神経を持続的に電気刺激して、脳に伝達された刺激によって、てんかん発作を緩和しようとする治療法です。刺激発生装置の埋め込みには小手術が必要です。切開部分は2カ所で、1カ所は左頚部の迷走神経を表出する部分で、螺旋電極を巻きつける場所、2カ所目は左大胸筋の部分で刺激発生装置を入れる部分です。
 有効性は、現在までの報告では、小児難治性全般てんかんに対しては、50%以上発作減少する割合が50‐60%(成人部分てんかんでは30-40%の減少率)と成人部分てんかんの結果よりやや良い結果が報告されています。また、刺激継続期間とともに効果を発揮する傾向や成人同様の安全性が報告されています。小児神経領域では発作程度、回復時間、記憶、情動、覚醒度の改善、入院回数の減少などが報告されおり、発作減少以外のメリットとして、患児の生活の質の向上があげられます。
 2017年、VNS Aspire SRという新機種が薬事承認を受けました。この機種は従来の機能に加え、発作出現時の心拍の増加を感知して随時刺激を開始するという機能も持ち合わせています。
 副作用は刺激に関連した一時的なものが多いようです。咳、声の変化、刺激部の違和感、しびれ感などですが、刺激期間とともに減少します。適切な刺激条件を決めることにより副作用を最小限にすることができます。VNSはあくまでも薬剤抵抗性てんかんの発作を緩和する補助療法です。VNSを小児の難治てんかんの緩和療法として安全かつ有効に使用されるためには、小児神経専門医と脳神経外科てんかん専門医との綿密な連携が必要です。

若井周治(札幌・中の島診療所)2019年5月1日改変

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