日本小児神経学会

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Last Update:2022年12月15日

小児神経Q&A

Q63:発達障害者支援法ができましたが、その理念と運用の状況・問題点などについて教えてください

発達障害者支援法は2004年に施行された、発達障害児(者)の早期発見と支援を目的とした法律です。2016年に発達障害児(者)の支援が切れ目なく行われ、より充実したものとなるよう改正されました。発達障害者支援法では、それまでの法律では障害者とみなされてこなかった、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害などを発達障害として定義し、発達障害の定義が確立したことで、障害者に関する様々な法制度に発達障害の位置づけが定着してきました。また、発達障害児(者)の早期発見と発達支援が行われるとともに、発達障害児(者)に対する就労、地域における生活等に関する支援及び発達障害者の家族に対する支援が行われるよう、国および地方公共団体が責任を持って施行することが義務付けられています。さらに、2016年の法改正において、その理念が明文化されました。障害者基本法の理念にのっとり、発達障害児(者)が個人としての尊厳にふさわしい日常生活・社会生活を送れるよう、障害の有無によって分け隔てることなく、当事者の意思決定の支援に配慮して、相互に人格と個性を尊重しながら共生する社会の実現を目指すものであることが記されています。

発達障害児(者)支援の施策は、医療、保健、福祉、教育、労働のすべての分野において施行する必要があります。本法の実施の中心となるのが「発達障害者支援センター」です。発達障害者支援センターでは、発達障害の早期発見、発達支援、就労支援、発達障害に関する研修を行うとともに、発達障害児(者)にかかわる他領域との調整を行うことが定められています。
また、国および地方公共団体は、乳幼児健診で発達障害の早期発見に努めることや、専門的に発達障害の診断や発達支援を行うことができる病院や診療所の確保、就労機会の確保と支援に努めることが義務付けられています。

発達障害者支援法は、発達障害の特性への理解と発達障害児(者)の自立および社会参加への協力を国民の責務とし、発達障害児(者)への支援を国および地方公共団体の義務として位置づけた法律ですが、その理念の実現にはまだ問題があります。現在なお、多くの地方公共団体では、その実行に必要な予算や専門的な人員の確保に苦労しているのが実情です。発達障害という概念の社会的認知も、近年急速に進んできていますが、まだ不十分です。また、小児神経科医、児童精神科医、臨床心理士など、発達障害を診療する専門家の社会的認知も進んでいません。本学会でも、一般市民向けの講座や専門家向けのセミナーの開催、発達障害の診療医師のHP上での公表など、発達障害者支援法の趣旨にそった活動を推進しています。

2022年10月 日本小児神経学会広報交流委員会QA部会

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