日本小児神経学会

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Last Update:2019年5月3日

小児神経Q&A

Q64:高次脳機能障害とはどういうものですか?

 人間の脳には、呼吸や循環など「生きていくために欠かせない機能」にはじまり、知的能力、運動能力、視覚、聴覚などの「基本的な機能」、さらに知識に基づいて行動を計画し、実行する「高度な機能」があります。このなかの「高度な機能」を高次脳機能と呼びます。高次脳機能障害とは、これらの高次脳機能に障害があるため、日常生活や社会生活に問題が生じるもののことです。高次脳機能障害は目に見えにくく、わかりにくい障害です。
 高次脳機能障害は大きく「認知障害(理解したり考えたりする能力の障害)」と「社会的行動障害」にわけられます。認知障害としては、記憶障害(覚えられない、忘れてしまう)、注意障害(注意が散漫で集中できない、落ち着かない)、遂行機能障害(物事を順序だてて行えない)、失語(ことばが出にくい、字が書けない)、失行(道具の使い方がわからない)、視覚認知障害(目の前にあるのに探せない、空間認知が悪い)などがあります。社会的行動障害としては、感情コントロール不良(すぐにキレる、暴力をふるう)、固執(こだわりが強い、切り替えが悪い)、意欲低下(やる気が出ない)などがあります。
 「高次脳機能障害」という用語は、一般には後天性のものに対して使われます。後天性の障害の場合、特に子どもでは長期にわたり改善していくことが多いです。脳に回復していく力(可塑性・かそせい)があるためと、子ども本来がもつ発達があるためです。そのため症状が時間とともに変化していく特徴があります。

栗原まな(神奈川県総合リハビリテーションセンター小児科)2019年5月1日改変

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