日本小児神経学会

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Last Update:2022年12月16日

小児神経Q&A

Q72:言うことは理解できるのですが単語が数語しか出ないのは病気でしょうか?

 言葉の発達にはかなり個人差がありますが、2歳になって単語が数語のみ、というのは言葉が遅いと考えます。しかし、ひと口に「言葉の遅れ」があるといっても、その原因は様々なので、まずそれをしっかりと見極める必要があります。以下に主だった原因について解説します。

  • 聴力障害
    ちゃんと聞こえていなければ、ちゃんと話すことはできません。高度の難聴の場合は、「音に対する反応が悪い」とか「呼んでも振り向かない」などの様子から割合早い時期に気づかれることがあるのですが、中等度以下の難聴や反応の良い子の場合はなかなか気づかれないこともあります。
  • 発達性言語障害
    言葉の遅れ以外に発達上の問題や原因が特に見当たらず、周囲への関心やコミュニケーションの意志がしっかりと見られる場合です。言葉の理解は年齢相応なのに、言葉を話す事が遅れている運動型(表出性言語障害)と、言葉の理解が発達していないために話す事も発達してこない感覚型(受容性言語障害)の二つのタイプがあります。いわば、純粋な「言葉の遅れ」です。
  • 精神遅滞
    知的な発達が全般に遅いことにより言葉の発達も遅れている状態です。
    言葉の遅れだけでなく、理解が悪い、身の回りの習慣を身につけることができないなどの遅れがみられます。
  • 自閉性障害
    対人関係やコミュニケーションなどいわゆる社会性の発達が著しく悪い障害です。対人相互反応の質的な障害、意思伝達の著しい異常またはその発達の障害、活動と興味の範囲の著しい限局性、の3つの特徴を有しています。言葉の遅れとともに、目が合わない、強いこだわりがある、同じ行動や行為に固執したり繰り返したりする、などの特徴があります。

 これらを診断するにはいくつかの専門的検査を行ないます。まず、聴力検査と発達検査(または知能検査)が必要です。この二つの検査とお子さんの行動特徴を観察することによりほとんどの場合診断が可能となります。診断がついた後は基礎疾患の有無などを調べるために脳波、MRIあるいはABRといった検査を行なうこともあります。言葉が遅いと感じるお子さんの状態を正確に評価し診断するためには、専門的知識と検査が必要になります。

 この様な不安や疑問を持った場合は、小児神経専門医がいる医療機関を受診されるか、地域の保健センターへご相談いただくことが必要です。

2022年10月 日本小児神経学会広報交流委員会QA部会

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