日本小児神経学会

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Last Update:2021年4月12日

小児神経Q&A

Q80:自閉症について教えてください
⑧どのようにしたらスムーズに切り替えてくれますか?

A先生からの回答

 発達障害のある子は、なかなかこちらの言うことをきいてくれません。元々言葉からイメージを持ちにくいので言葉だけでは切り替えが困難のですが、次にやることを具体的な指示したり一緒に行動したりしてもきいてくれないことも少なくありません。結果的に叱ることになりパニックになってしまいます。おすすめは「言い分」をきくことです。言い分をきくだけで、言いなりになる必要はありません。言い分をきくというのは、その時の子どもの気持ちによりそうことです。具体的には子どもの気持ちを想像して言葉にすることです。言い分をきいてあげた後に、こちらの言い分を示します。子どもたちも自分の言い分をきいてもらえると、気持ちが落ち着いてこちらの言い分をきいてくれることが出来るようになります。具体的な例を示します。私の診察室にはおもちゃがたくさんおいてあります。初診の幼児さんの中には、診療が終わった後に、気に入ったおもちゃを持って帰ると離さない子が出てきます。こんな時にお母さんが「病院のだからダメ」と言うと、ますます持って帰ると大騒ぎをしだします。持って帰ってもらってもよいのですが、帰る途中で飽きて捨てられる運命が予想されるのでなんとか諦めてほしいと思いますがうまくきません。そこで言い分をきいてみました。「持って帰っていいよ」では言いなりです。「持って帰りたいね」「お家でも遊びたいよね」を繰り返してみました。何度も繰り返すと子どももだんだんとテンションが下がってきます。テンションが下がったところで、おまけのシールを見せて、「これとかえっこしようか?」と提案すると、スッと交換してくれました。
 相手の言い分をしっかりきいてから、こちらの言い分を示すというのがコミュニケーションの基本だと思います。自閉症の子どもはコミュニケーションが難しいといいながら、私たちがコミュニケーションの基本を忘れてはいけませんね。
 上記が対応の基本ですが、全体的な発達レベルや自閉傾向の強さはお子さんによって様々ですので、ご家族だけで悩まず教育・医療関係者に相談されることをお勧めします。

B先生からの回答

 自閉スペクトラム症のお子さんに限らず、ゲームをやめて夕食のテーブルにつきたがらない、タブレットで動画を見ていてなかなか宿題に取り掛かれない、といったように、子どもに楽しいことをやめさせて、次の行動に移らせるのは難しいことがよくあります。無理やりやめさせようとするとかんしゃくを起こしたり、外出先でも床に転がって駄々をこねたり…。親としては途方に暮れてしまったり、強く叱りつけてしまうことも少なくないと思います。子どもはみなそうですが、自分がやりたいことをやめさせられたり、思っていたのと違うことをさせられるとなると、なかなか切り替えることができません。自閉スペクトラム症のお子さんの場合、好きなことに集中しすぎる過集中、ゲームや楽しいことがいつまでも続くわけではないという想像がしにくいこと、ことばでの指示が伝わりにくいなどの特性があるため、いくら声をかけても動いてくれない、ということがしばしば起こります。

 まず試していただきたいのは、楽しいことがいつになったらおしまいで、その次は何をするか、という予定を予めお子さんに示して、「この時間になったら楽しいことをやめて~をするんだ」という見通しが持てるようにしてあげることです。ゲームなどの楽しい活動をしているとき、自分では今すごくいいところでまだまだやるつもりだった(もっと続けるという見通しを持っていた)のに、急に「やめなさい」と言われたら、自分の持っていた見通しと違うために、お子さんは受け入れられなくて怒ったりかんしゃくを起こしたりします。そこで楽しい活動を始める前に、お子さんと例えば「ゲームは6時まででおしまい、そのあとは晩御飯だよ」というお約束もしくは予定の確認をします。「6時になったらご飯だよって呼ばれるだろう」という見通しを持ちながらゲームをするのと、6時に急にご飯に呼ばれるのとでは、お子さんの切り替えやすさは全然違います。それと合わせて、ことばだけの指示ではちゃんと聞いていなかったり、忘れてしまうこともあるので、次の予定について時計の針の絵とその活動内容を絵や文字で示したものを目で見える形で示すことで、わかりやすくしたり確認しやすくすることができます。いわゆる視覚的スケジュールの活用です。

 さらにスケジュールを活用した上で、楽しい活動をおしまいにする少し前に、あと〇分でおしまいにして、~するよ、と予告してあげるとよいでしょう。予告といっても、遠くからことばをかけるだけでは、集中していて聞こえていないことが良くあります。そばに行って、注意をむけさせて、スケジュールと時計を見せながら声をかけてあげると、ことばの発達がゆっくりなお子さんにも伝わりやすいと思います。

 お約束やスケジュールを使っての切り替えがスムーズにいくコツは、お約束をしたりスケジュールを作る際に、お子さんの納得・合意を得ることです。特にことばでしっかり意思表示ができるお子さんの場合には、お子さんと一緒にお約束やスケジュールを作るとよいでしょう。自閉スペクトラム症のお子さんは、自分のルールにこだわることがよくありますが、一緒に作ったお約束やスケジュールはしっかり守ってくれる、という長所にもなります。

 このような工夫をしても、やはり楽しすぎて切り替えられないこともあると思います。お子さんが駄々をこねたり、あと~分、とか言うのに負けてしまって、ダラダラと続けさせてしまうと、お子さんが「駄々をこねたら長くさせてもらえる」「あと~分と粘れば、続けてさせてもらえる」という学習をしてしまうことになります。一方で、決めた時間に必ずおしまいにする、というルールが成立すれば、このような困った行動も減らすことができます。お約束・スケジュール提示をした上で、お約束はかならず守らせるという厳しさも必要です。ただ怒りながら泣きながらも、楽しいことをやめて、次の活動に移ろうとしてくれた時には、すかさず褒めてあげることも忘れないであげてくださいね。

 見通しを持たせる方法は、自閉スペクトラム症のお子さんに限らず、どんなお子さんに対しても有効です。きょうだいがいらっしゃる場合には、皆さんに同じようなやり方をされることをお勧めします。

2021年3月 日本小児神経学会ホームページ委員会QA部会

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