B先生の回答

自閉スペクトラム症を持つ子どもが偏食になりやすいのは、「食べることは簡単なことではなく、自転車や水泳と同じように学んで獲得する技能だから」です。誰でも、好きなこと、得意なことは言われなくてもどんどんできて上手になっていくでしょうが、苦手なこと、嫌いなことはなかなか行動に移せずうまくならないものです。現在偏食のお子さんがいつ頃から食べていたものが食べられなくなり、好きなものだけ食べるようになったのでしょうか。その時期からこれまで長い間、食べるように言われたり、食べさせたれたりして、食卓につくことさえ嫌がるようになっていませんか。子どもの偏食対策は、自閉スペクトラム症の有無を問わず、基本的には一緒です。ただし、こだわりや不安が強い場合、ステップアップに時間がかかります。以下に述べることをやってみてください。でも、お子さんは食べることが苦手なのです。一度にたくさん要求せず、スモールステップで、ゆっくり、何度も、思いやりとユーモアを持って行ってください。少しでも進歩があれば喜びましょう。

偏食の子どもへの実践的な対処法

1. 食卓における親子の役割分担を明らかにします。
   親の仕事は、「いつ、どこで、なにを」を決め実行すること。
   いつ：1日3食と、1回軽食（2歳以降）、1回15～30分以内。
   どこで：食卓で。椅子は子どもの体格にあったもので、足底が床か足台についていること。食卓では家族が一緒に食べる、家族全員ながら食べはしない。
   なにを：メニューは親が決める。子どもが必ず食べるものを1品は出す。他は家族が食べているものから、興味を持ったら本人のお皿にほんの少し置いてもいい。
   子どもの仕事は、出された食べ物を食べる、食べない、どのくらいの量を食べるかを決めることです。
   この親子の役割分担の前提として、親が、「子どもは自ら、必要なものを選び取って、必要な量を食べるようになると信じる」ことがあります。

   よくある質問

   • 食べなかったら、代わりのものを出してはいけないか：代わりを出しません。メニューは親が決めるので、子どもに決めさせると好きなものしか言いません。また、子どもの決めたメニューを出しても、食べないこともあります。役割を守っていないので混乱するだけです。
   • 食後1時間もしないうちに、何か食べるものを欲しがる場合、さっき食べなかったからここは出したほうがいいかとか揺らぐかもしれませんが、ここは、「いつを決めるのは親」ですので、決めた食事時間以外は、水かお茶以外は出しません。（カロリーのあるジュース、牛乳、スナックなども出しません）
   • 食事中、テレビやネット動画を見ないと座って食べませんという相談もよくあります。子どもは二つのことを同時にできません。よって、「食べ終わったら見ようね」という方針にし、食事中は一切の動画、おもちゃなしにします。
2. 食べない、座らない、好きなものだけ食べる子どもを前に、いきなり子どもを信じて対処法1を実践するのは無理と思われるかもしれません。では、「子どもに食べさせることを強制しない」ことから始めませんか（これは役割分担の大事な部分です）。食卓で、直接食べさせていなくても、言葉や、態度で食べるようプレッシャーを与えていませんか。思い当たる節があれば、直ちにやめて、まずは、ご家族が自分の食事を本気で美味しく食べてください。きっと、食卓でのストレスが減り、お子さんは、本来の能力を出しやすくなりますし、周囲が何を食べているのか見るようになると思います。そこが、食べられるものを増やすヒントになります。子どもが興味を持つと、親は嬉しくなってすぐに「食べる？」と聞いてしまいますが、そこは、もったいぶって、今食べているものがどんな色、形、食感かを楽しくゆっくりお話ししましょう。お子さんの興味が続くようなら、期待せず、注目せず、子どもの小指くらいの量を、子どものお皿の端に置いてみます。食べるか食べないかは子どもが決めます。
3. お子さんの食卓での気になる行動に対しては、以下をモットーにすると変化が出てきると思います。
   • 食卓でのして欲しくない行動の背景を理解する。
   • 子どもの気持ちに共感する。
   • 望ましい行動を肯定文で提案する。
   • 評価する言葉、質問形は使わない。
   • 大人が、ユーモア、遊び心のある態度をとる。

以上、騙されたと思って、まずは2週間やってみてくださいね。好ましい変化が出てきたら、だんだんコツがわかってくると思いますよ。