日本小児神経学会

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Last Update:2022年12月16日

小児神経Q&A

Q80:自閉症について教えてください
⑥苦手なことは頑張らせた方がよいでしょうか? 

A先生からの回答

 一般的な教育の考え方では、出来ないことを頑張るのは価値のあることだと考えられています。出来ないことを頑張って出来るようになることは確かにあります。今は出来ていないけれども、これまで蓄えてきた知識と経験からステップアップの準備が出来ている状態であれば、努力して次のステップにすすむことは可能です。このような状態で頑張ることは価値があります。発達障害のある子が発達特性から向かないこと、障害として今は出来ないことを適切な理解や支援なしに頑張ることは残念ながら自尊心の低下など二次障害につながることもあります。発達障害があったとしても準備のできていることを頑張ったり、後押ししたりすると出来るようになることも事実です。何を頑張るかの見極めがとても大切です。そのためにはアセスメントが必要です。「○歳だから出来る筈だ」とか、「もう○年生だからこれくらい出来ないと」という課題設定ではなく、その子の発達レベル・発達特性から今優先して取り組むべき課題を適切に選択し、ご家族だけでなく保育・教育関係者とも十分相談して個別の支援計画に基づいて対応されることをお勧めします。
 頑張らせ方にも工夫が必要です。その子に向いた方法を提案すると頑張ってくれますし、成果も期待できます。発達障害のある子では発達特性や障害の特徴をしっかり分析把握し、その特性を活かせるような頑張らせ方を示して、頑張ってもらうことが大切です。それでもうまくいかないこともありますので、やってみてうまくなければ見直し修正を繰り返すことも頑張ってもらうためには不可欠です。
 現状の行動や生活のエピソードをもとにステップアップの準備のできている状態(これを発達の旬といいます)を探り、発達検査や日常の生活動作の観察から発達特性を確認することが、頑張らせることには必要です。頑張らせるためには、その子の発達特性の理解と適切な支援が必要なことを認識しておきましょう。おすすめは大人の勝手な思い込みで頑張らせるよりも、子どもたちが今やろうとしていることを邪魔せずに応援することだと考えます。

B先生からの回答

 苦手なことを克服することができればいいですよね。でも、苦手なことを克服するためには、苦手なことを続ける力、それを乗り越える忍耐力が必要になります。その忍耐力を持ち合わせていない子どもにとっては、途中で投げ出してしまうこともあるでしょう。萎縮してしまうことも少なくありません。そうすると、子どもだけでなく親も辛くなってしまいます。
 苦手なことに注目するよりは、得意なことに注目してもらうよう視点をかえてはいかがでしょうか。得意なことをやっているとやる気が出てきます。そして楽しくなってきます。その楽しさは、子どもだけでなく親にとっての楽しさにもなります。そうすると、笑顔になります。自己肯定感が育ちます。
 楽しく笑顔で日々を過ごし、社会につながる道を模索していきましょう。

2021年3月 日本小児神経学会広報交流委員会QA部会

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