日本小児神経学会

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Last Update:2021年4月5日

小児神経Q&A

Q80:自閉症について教えてください
⑤親はどう向き合い、育てていけばよいでしょうか 

 自閉症に限らず、発達障害の診断は子どもの発達が間違っていると決めつけたり、子どもの将来を否定したりするために行うものではありません。
 発達障害診断は多数派とは異なる発達特徴をもつ少数派であることの確認であり、少数派であるからこの世の中で生き難さを抱えていることの証明なのです。子どもにとっては、診断が独自の発達を保証される根拠になります。その年齢で期待される標準的な行動が出来るようになることは目的ではありません。現在の示しているユニークな発達を肯定的に評価することが大切です。
 子どもの示す行動に発達的意味の無いことはありません。肯定的な意味付けをすることで支援のアイデアが湧いてきます。「言うことをきかない子」ではなく、「言われたことが、よく理解できない子」と読み替えると介入ポイントが見えてきます。

 診断により多数派とは異なる発達の特徴を持つことが証明されたということは、当たり前の育児が通用しないこと、特別な育児が必要であることのお墨付きをもらったことになります。通常の育児では多くの保護者はまずは自分自身の育てられ体験をもとに育児書にそった育児を試みることになりますが、発達障害のある子の育児は自分の体験も役に立たず、マニュアルどおりにもいきません。日々の生活を穏やかに過ごすには、しつけよりも円滑に時間が流れることを優先するしかありません。 結果的には、こどもに振り回されている日常しか残らず、保護者自身の育児に自信を失い自分を責めることになります。発達障害診断があれば、しつけが出来てなくて子どもの言いなりになっているような今の育児こそが、試行錯誤の結果たどり着いたその子にとって現時点でのベストの育児だということを保証されるのです。
 まずはこれまでやってきた育児を全て正しいと思って、自信をもって今の育児を続けて下さい。

林   隆(西川医院発達診療部発達障害研究センター)2019年5月1日改変

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