日本小児神経学会

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Last Update:2019年5月9日

小児神経Q&A

Q80:自閉症について教えてください
③自閉症はどのように診断されますか

 アメリカ精神医学会の診断統計マニュアル(DSM)やWHOの国際疾病分類(ICD)の診断基準によると、①対人社会性の質的な障害、②言語コミュニケーションの質的障害、③強いこだわりという3つの特徴をみとめ、これらの特徴が原因で社会生活が困難になっている状態を自閉症と定義しています。
 用語の問題ですが、一般に自閉症といわれる状態をDSMの第4版(DSM-IV)とICD第10版(ICD-10)では、広汎性発達障害という表現でしめされ、DSMの第5版(DSM-5)では自閉症スペクトラム障害/自閉スペクトラム症と表現されます。厳密には自閉症研究の成果により、微妙な違いはありますが、自閉症と同じ意味と考えてください。今は自閉症スペクトラム障害という言い方が一般的になってきています。
 診断の枠組みは身体疾患とは大きく異なります。自閉症の診断はDSMもICDも操作的診断基準によって行われます。
操作的診断基準とは原因が不明なために、生物学的な検査方法がなく、臨床症状によって診断せざるを得ない精神疾患に対し、信頼性の高い診断を行うために設けられた診断基準です。原因や病態から症状を説明出来るような身体の病気の診断とは全く異なる診断基準です。症状の背景に病態を想定していないので、診断がなされても、そこから病態に基づく理解や治療対策も出てきにくいのが特徴です。操作的診断基準は病態に基づく理解や治療という患者家族にとって重要な情報を導きにくい診断基準ということもできます。
体験記憶>概念理解という自閉症の特性をしっかり理解することが支援につながる自閉症の理解には必要だと考えます。

 自閉という用語はそもそも精神医学の用語で、統合失調症の主症状の1つとして、1911年にスイスの精神医学者ブロイラーが示した概念で、内的生活の比較的あるいは絶対的優位を伴うところの現実離脱と定義されています。わかりやすくいえば「客観的な状況がどうであれ、自分が体験したことが絶対的真実だというものの考え方」となります。背景には自閉症の子どもの「体験したことをそのまま正確に記憶出来る能力はとても優れていますが、体験を概念化し応用するのが苦手」だという特性が関与しています。
 このような発達特性から自分が体験したことが絶対的真実と感じるものの見方が出来てくるのです。

林   隆(西川医院発達診療部発達障害研究センター)2019年5月1日改変

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