日本小児神経学会

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Last Update:2019年5月13日

小児神経Q&A

Q68:注意欠如・多動症(ADHD)とはどんな疾患ですか?

 子どもたちは幼児期には活発であることが当然であり、様々な経験から成長とともに次第に自分をコントロールできるようになっていきますが、年齢不相応に自分をコントロールできずに、落ち着きがなかったり、物事に集中できる時間が短い、忘れ物が多い、衝動的な行動をとるなどの問題がみとめられることがあります。このような中に注意欠如・多動症(Attention Deficit Hyperactivity Disorder;ADHD)のこどもが存在します。
 ADHDとは年齢あるいは発達に不釣合いな注意力、および・または衝動性や多動性の問題のために社会的な活動や学業の機能に支障をきたすもので、12歳以前にその特徴が現れ、その状態が持続する状態と定義されます。脳機能の発達・成熟にかたよりが生じた結果と考えられていますが、その原因はまだ確定していません。親子で似ていたり、胎生・出産時のトラブルや子どもが成長していく環境などが複雑に関係して症状が現れると考えられています。
 本邦における学習面または行動面で著しい困難を示すこどもは2003年の文部科学省の調査で約6.5%存在するとされ、これは世界的にもほぼ同じ値で、男児が女児の約3-5倍とされていますが、思春期になると多動衝動性が軽減することもあり性差はほとんどなくなるとされています。
 診断には関連・類似するその他の発達に関わる疾患を除外しつつ、2つ以上の状況(自宅と学校など)において同じような症状が存在することなど、こどもの発達を見守りつつ診断します。
 ADHDのこどもたちは不注意、多動性、衝動性などの中核となる症状以外にも、その特徴を理解されないまま不適切な状況・対応が続くと、怒りっぽくなったり、反抗的な態度や攻撃的な行動を取るなど周囲との関わりがうまくいかなくなったり、学習に遅れが見られたり、叱られ続けることなどで自尊心・自己評価が低くなるなど二次的な問題が生じる可能性があります。
 ADHDの診断と治療が早期に適切に行われるほど予後が良いというのはこのためです。

宮島 祐(東京家政大学子ども学部)2019年5月1日改変

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