日本小児神経学会

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Last Update:2019年5月1日

小児神経Q&A

Q57:インフルエンザ脳症はどうしたら予防できますか?

 インフルエンザ発病後、多くの方は1週間程度で回復しますが、中には肺炎や脳症等の重い合併症が現れ、入院治療を必要とする方や死亡される方もいます。これをインフルエンザの重症化といいます。特に基礎疾患のある小児や高齢の方では重症化する可能性が高いと考えられています。インフルエンザで最も重い合併症がインフルエンザ脳症です。死亡率は約30%で、後遺症も約25%の子どもに見られる重篤な疾患です。
 発症を予防するにはインフルエンザワクチン接種が有効です。インフルエンザワクチンの最も大きな効果は、重症化を予防することです。ワクチンにはインフルエンザによる重篤な合併症や死亡を予防することが期待されています。国内の研究によれば、65歳以上の高齢者福祉施設に入所している高齢者については約34-55%の発病を阻止し、約82%の死亡を阻止する効果があったとされています。小児では、6歳未満の小児を対象とした2015-2016年シーズンの研究では、発病防止に対するインフルエンザワクチンの有効率は約60%と報告されています。

参考 厚生労働省インフルエンザQ&A

 また、解熱剤使用と脳症との関連も明らかになってきました。発熱はインフルエンザの主な症状のひとつで、ウイルスに対する免疫反応の一部であり、必ずしも解熱させなければならないものではありません。38-38.5度以上の発熱があって、元気がなく、ぐったりしているようであれば解熱剤を使用してもよいでしょう。解熱剤の使用の際、アスピリン(商品名:バファリン®など)やメフェナム酸(ポンタール®など)、ジクロフェナクナトリウム(ボルタレン®など)は使用しないでください。インフルエンザに使用できる解熱剤はアセトアミノフェン(アンヒバ坐剤®、アルピニ―坐剤®、カロナール®など)が主体です。解熱剤の使用で不明な点があればかかりつけ医と御相談ください。

中川栄二(国立精神・神経医療研究センター病院小児神経科)2019年5月1日改変

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