日本小児神経学会

会員専用ページログイン
Last Update:2019年5月1日

小児神経Q&A

Q33:重度脳性麻痺の子どもの喉頭気管分離術について教えて下さい。

食べ物は口から食道にいき、空気は鼻から気管に流れますが、ノド(下咽頭)のところで、その流れが交叉します。この流れは絶妙にコントロールされており、私達は呼吸をしながら、食べ物をむせることもなく食道に飲み込むことができます。けれども重度脳性麻痺のお子さんでは、この流れの調節がうまくいかず、唾液や食べ物が誤って気管に入り、誤嚥性肺炎になることがあります。通常は、食べ物が気管に入ると防御反応として咳きこみが起こり、気管に入った物を出そうとしますが、重度脳性麻痺のお子さんでは、誤嚥をしてもむせないことがあり、誤嚥と気づかずに食べさせて誤嚥性肺炎を起こしてしまうこともあります。誤嚥性肺炎を繰り返すと、肺の組織が痛んで呼吸機能が悪くなり、酸素や人工呼吸器が必要になることもあります。また、痰などの塊がノドにつまって窒息することもあります。誤嚥の疑いのある場合には、造影剤を飲み込む様子をX線透視で観察するビデオ嚥下造影検査(VF)などの検査をして、嚥下機能を評価します。誤嚥防止のためには、食べ物の通る道と、空気の通る道を分けることが必要です。誤嚥防止手術の主な方法は、喉頭気管分離術(分離術)と喉頭摘出術があります。分離術は、喉頭と気管を分離して気管の上の部分を首の中央に開けます。喉頭の下の部分を閉じてしまう場合と食道に通じるようにつなげてしまう場合があります。喉頭摘出術は喉頭を摘出し、気管の上の部分を首の中央に開けます。

手術の決断は、ご家族にとって大変辛いことでしょう。しかし、上手くいけば呼吸は大変楽になります。私が担当していた患者さんでも、手術前には呼吸がとても苦しく常にゼロゼロしていたのが、手術後には驚くほど呼吸が楽になり、つっぱりが改善してんかん発作も減少し患者さん本人が楽になり、介護するご家族も大変喜ばれたケースをたくさん経験しています。手術が必要な状態であること、手術により声を失いますが命を脅かす誤嚥性肺炎が減るメリットをご家族の方が、十分納得されることが最も大切と存じます。今までみていただいている小児科医、手術を担当する医師(耳鼻科医や小児外科医)とよく相談してください。

(北海道立旭川肢体不自由児総合療育センター小児科  宮本 晶恵/2016年7月QA委員改変)

このページの先頭へ