日本小児神経学会

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Last Update:2019年7月4日

小児神経Q&A

Q11:重度脳性麻痺のこどもの筋緊張への対処について教えて下さい。

 重度脳性麻痺の多くの場合、筋緊張が亢進して強い力が入り続けるため、1)楽に座わることや寝ることができない、2)思うように手足を動かせない、3)着替えや移乗の介護負担が大きい、4)疼痛、不機嫌や不眠をみる、5)長期的に手足や脊柱が変形する、6)呼吸障害や胃食道逆流症を合併する、などの問題が生じます。そのため、筋緊張を軽減する治療は、このようなこどもの生活の質や健康維持にとって大変重要です。ボツリヌス療法、脊髄後根切断術、バクロフェン髄腔内投与療法などの新たな治療は、筋緊張を劇的に軽減させ、上記の問題を大きく改善します。従来の経口筋弛緩薬が無効の場合には、これらの新たな治療をお勧めします。一方、すでに拘縮・変形がある年長児には、まず整形外科の矯正手術が必要となります。

1.経口筋弛緩薬

 からだ全体の筋緊張が強い場合、最初に試みるべき治療です。ジアゼパムとチザニジンが比較的有効で、経口バクロフェンもしばしば投与されます。これらは中枢神経に作用するため、眠気やよだれなどの副作用に注意します。ダントロレンは筋肉に直接作用し、筋肉の収縮力を弱めますが、肝臓障害の副作用に注意します。

2.ボツリヌス療法

 筋肉内にある運動神経の末端の働きを麻痺させ、筋肉を弛緩させます。薬液は注射した筋肉だけに作用します。股関節亜脱臼の原因となるハサミ足へは1歳台から、つま先立ちへは2歳台から開始します。腕を伸ばしにくい、手指が開きにくい場合は3歳台から開始します。また、くびやからだの反り返りも1歳台から治療できます。重篤な副作用は少なく比較的安全な治療ですが、治療効果は一時的で、投与量が少ないと2~3か月、充分量でも4~6か月位で効果が切れますので、4~6か月おきに治療します。

3.脊髄後根切断術

 足の感覚神経を、脊髄に近いところで切断し、足の筋緊張を軽減する手術です。切断する神経は、運動神経ではなく、筋肉の収縮状態を伝える感覚神経ですので、運動麻痺は起こりません。ボツリヌス療法では改善が不十分な下肢の強い筋緊張に適応され、3~9歳の時期に手術します。一度手術すれば、永続的に効果が持続します。

4.バクロフェン髄腔内投与療法

 バクロフェンの薬液が入ったポンプをからだに埋め込み、カテーテルを通じて脊髄周囲に薬液を送り、筋緊張を軽減させます。経口バクロフェンの1/100の量で有効なため、眠気などの副作用はありません。からだ全体に強い筋緊張がある、激しい運動の少ない小児に適応され、身長100cm程度の体格になれば導入できます。薬液の補充は毎3か月、電池切れによるポンプの入れ替えは毎6~7年に行います。副作用には、まれに金属アレルギー対応、カテーテルが閉塞した場合の発熱などがあります。

5.訓練を含めた一般的留意点

 上記の治療は、筋緊張を軽減しますが、運動麻痺を治す治療ではありません。
からだは、たとえ柔らかくなっても、動かさないと関節の動く範囲が徐々に狭くなり、拘縮・変形を生じます。したがって、日々の充分なストレッチ、適切な装具療法や姿勢保持装置などは、治療後も欠かせません。

(2019/7月 一般社団法人日本小児神経学会ホームページ委員会改変)

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