日本小児神経学会

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Last Update:2019年5月13日

小児神経Q&A

Q84:指定難病に関して教えて下さい。

指定難病について説明します。対象疾病を含む詳細は、難病情報センターのホームページをご覧下さい。

1.制度の変遷

 日本の難病対策は、昭和30年代に大流行した整腸薬キノホルムによる薬害であるスモンに対するものから始まりました。1972(昭和47)年、スモンを含む8疾患を対象に特定疾患調査研究事業が開始され、一部では治療研究事業として医療費助成も行われました。その後、対象疾患数が少しずつ増やされ、1997(平成9年、選定基準に「希少性」(国内患者数5万人未満)が基準となりました。2009(平成21)年、特定疾患調査研究事業対象が130疾患、そのうち医療費助成が行われる特定疾患治療研究事業対象が56疾患でした。2014(平成26)年5月、第186回通常国会で「難病の患者に対する医療等に関する法律案」(いわゆる難病法)が可決成立し、2015(平成27)年1月1日から施行されました。
 対象疾患は、厚生労働省指定難病検討委員会での議論をもとに厚生科学審議会疾病対策部会で選定され、現在、331疾病が認定されています。

2.助成の実際   

 難病は、1)発病の機構が明らかでない、2)治療方法が確立していない、3)希少な疾患である、4)長期の療養を必要とする、の4要件を満たす疾患で、指定難病は前記1)-4)に加えて、5)患者数が本邦において一定の人数(人口の約0.1%程度)に達しない、6)客観的な診断基準(またはそれに準ずるもの)が成立している、の2要件を満たす必要があります。重症度が中等度以上の指定難病が医療費助成の対象になります。
 難病指定医(学会が認定する専門医資格をと難病診療の経験を有し、知事が行う研修を受けるなど)が、診断基準と重症度に関する判定を記入した臨床個人調査票を準備して、都道府県に申請します。更新申請の場合は、専門医資格を持たない協力難病指定医による書類記載も可能です。基本的に診断基準と重症度分類(基本的に中等度以上)をともに満たせば認定され、受給者証が発行されます。指定医療機関、薬局、訪問看護ステーションなど(複数登録が可能、介護保険の医療系サービスも助成対象)で行う医療費が助成対象となり、有効期限は1年で毎年更新が必要です。対象疾病に付随して発生した指定医療機関、薬局、訪問看護ステーションなどでの医療費のうち、所得に応じた額(最大30,000円)を上限とし、その2割を自己負担金として支払います。軽症者でも高額な医療を継続することが必要な患者(月ごとの医療費総額が33,330円を超える月が年3回以上)は医療費助成の対象となる「軽症高額」制度もあります。
 指定難病の公的扶助は医療費助成が主ですが、障害者自立支援法が改定され「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(障害者総合支援法)に変更されたことに伴い、2013(平成25)年4月から同法の定める障害児・者の対象に難病等が加わり、難病患者にも障害福祉サービスの公費負担が開始されました。対象疾病数は当初130疾病でしたが、2018(平成30)年4月から総合支援法独自のものを含む359疾病に拡大されました。障害者手帳を所有していなくても、対象疾病に罹っていることがわかる証明書(診断書)を持参し、最寄りの市区町村窓口に一部の障害福祉サービスを申請することができます。

林 雅晴(淑徳大学看護栄養学部)2019年5月1日改変

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