日本小児神経学会

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Last Update:2022年12月16日

小児神経Q&A

Q83:小児慢性特定疾病に関して教えて下さい。

 対象疾病を含む詳細は、小児慢性特定疾病情報センターのホームページをご覧下さい。

1.制度の変遷

 1968(昭和43)年度、先天性代謝異常症に対する医療費助成事業が開始されました。1974(昭和49)年度に疾患別事業が統合され、糖尿病、膠原病、慢性心疾患、内分泌疾患を加えた9疾患群を対象とした「小児慢性特定疾患治療研究事業」が創設されました。1990年(平成2)年、神経・筋疾患が加わり10疾患群となりました。
 2005(平成17)年、児童福祉法改正により事業が法制化され、慢性消化器疾患も加わり11疾患群となり、2014(平成24)年、対象疾患数514疾患、患者数は約11万人でした。2014(平成26)年5月、第186回通常国会で「児童福祉法の一部を改正する法律」が可決成立し、2015(平成27)年1月1日から施行されました。予算措置も従来の裁量的経費から義務的経費に変更されました。疾患群の整理も行われ、血液・免疫疾患群が血液疾患群と免疫疾患群に分けられ、先天異常症候群と皮膚疾患群が追加されました。
さらに2018(平成30)年に骨系統疾患、脈管系疾患が追加され、現在、計16疾患群の756告示疾病が対象となっています。神経・筋疾患群では78疾病が対象となっています。

2.助成の実際

 小児慢性特定疾病(以下、小慢)は、児童期に発症する疾病で、1)慢性に経過する、2)生命を長期にわたって脅かす、3)症状や治療が長期にわたって生活の質を低下させる、4)長期にわたって高額な医療費の負担が続く、の4要件を満たすものです。一定以上の重症度を示す18歳未満の患児が医療費助成の対象となりますが、引き続き治療が必要と認められた場合は20歳未満の患者も対象となります。
 小慢指定医(該当疾病の診療経験を有し、学会が認定する専門医資格を持っているか、都道府県等が実施する小慢指定医講習会を受けた医師)が記入した小慢医療意見書を準備して、都道府県、指定市、中核市に申請します。有効期限は1年で毎年更新が必要です。対象疾病に付随して発生した傷病に対する小慢指定医療機関(薬局、訪問看護ステーションなどを含む)で行われた医療費のうち、所得に応じた額(最大15,000円)を上限とし、その2割を自己負担金として支払います。1か月の支払い額が上限額に達した時点で支払いは免除されます。
  新制度には、都道府県・指定都市・中核市が実施主体となる自立支援事業も盛り込まれました。予算的問題から必須事業は今のところ相談支援事業のみで、療育相談指導事業、ピアカウンセリング事業(慢性疾患児既養育者による相談支援)が進められています。任意事業として、日常生活支援事業、就職支援事業、介護者支援事業なども検討されています。

林 雅晴(淑徳大学看護栄養学部)2019年5月1日改変

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