日本小児神経学会

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Last Update:2022年12月16日

小児神経Q&A

Q79:震災などの災害後から家族が死ぬ夢を見て恐怖感・不安感に襲われるこどもにどのように対処してあげたらよいのでしょうか。

 子どもの恐怖感・不安感に対して、「だいじょうぶ」であることを伝えてあげることが大切です。伝え方はさまざまですが、子どもが抱えているのは「感情」の問題であって、「理屈」ではないことをまず理解しましょう。大人なら、悩みを聞いてもらい、問題を整理してすっきりできるかもしれません。このためには、問題を整理するだけの経験と能力が必要です。子どもの場合は、自己解決できるだけの経験に乏しいと考えたほうが無難です。また、「理屈」ではないので、言い聞かせることは、むずかしいようです。
 あなたが「だいじょうぶ」と考えていることを「感情」として伝えるに、ことばを使わないメッセージをうまく利用しましょう。心理学者のメラビアンによれば、コミュニケーションのおおよそ7割が、口調や表情、身ぶりなどによって伝えられ、言葉そのものは数割にすぎないそうです。
 例えば、子どもが恐怖感や不安感について話しているときに、あなたが深刻な表情をしたり、困った顔をしたりすると、子どもは自分が重大な問題をかかえていると誤解してしまいます。あなたがにこやかにしていれば、子どもは、自分の問題が大人なら簡単に解決できることだと理解することでしょう。「だいじょうぶ」のメッセージは、子どもの好きな夕ご飯を作ったり、楽しく遊んであげたりすることでも伝えられます。

 まず、出来事が起こる前の、普段通りの生活パターンに戻れるように、環境を整えることから始めましょう。具体的には、「早寝・早起き・朝ごはん」を守ることです。子どもと大人がいっしょに支え合って生活することも、立ち直りに大切です。 支え合うことで、子どもが自分の存在価値を再確認するからです。大人が頑張りすぎて疲弊してしまわないように、協力を得ながら対処しましょう。ショックを受けるような体験の後、つらいと感じるのは当然のことです。日常の安全な生活を続けることで、徐々に心の傷は回復します。もしも、震災に限らず精神的衝撃を受けるトラウマ(心的外傷)体験の後に先に述べた行動が1ヵ月以上続き、日常生活に支障をきたすような場合には、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と呼ばれる状態が考えられます。

 上記にあげたような支援を続けても症状が持続し、パニック、自傷行為、無気力、閉じこもりなどがみられる場合には、一人で悩まずに周囲の人や児童相談所、医療機関等に相談して下さい。

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2022年12月 日本小児神経学会広報交流委員会QA部会

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