日本小児神経学会

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Last Update:2022年12月16日

小児神経Q&A

Q56:熱中症の処置法を教えてください。

 熱中症とは暑い環境で身体に生じる色々な障害の総称です。専門的には、「暑熱環境下や運動などによって体の中でたくさんの熱を作るような条件下にあった者が発症し、体温を維持するための生理的反応の軽度失調状態から、全身の臓器の機能不全に至るまでの、連続的な病態」と定義されています。熱波により主に高齢者に起こるもの、乳幼児に高温環境で起こるもの、暑熱環境での労働で起こるもの、スポーツ活動中に起こるものなどがあります。熱中症というと、暑い環境でのみ起こるものというように思われがちですが、スポーツや身体活動中では、筋肉から大量の熱を発生すること、脱水などの影響により、常温環境でも発生しうるものです。
 小児に関しては、炎天下の車の中に放置されることによる熱中症や、ベビーカーが地面に近いので乗っている赤ちゃんが熱中症になりやすいなど、特別な注意が必要です。頭痛、吐き気、めまいなどの前駆症状がみられますが、いったん発症すると全身臓器障害を合併することが多く、死亡することもあります。
 熱中症の予防法としては、個々人の体調に応じた活動を考慮すること、十分な水分補給、早期の応急処置に尽きます。日本スポーツ協会が「熱中症予防の原則」として5ヶ条を発表していますので、参考にしてください。
 熱中症の処置ですが、軽症の場合は涼しい場所に運び、衣服をゆるめて寝かせ、水分を補給すれば通常は回復します。吐き気やおう吐などで水分補給ができない場合には点滴を受ける必要があります。意識消失は死の危険のある緊急事態ですので、体を冷やしながら集中治療のできる病院へ一刻も早く運ぶ必要があります。いかに早く体温を下げて意識を回復させるかが予後を左右するので、現場での応急処置が極めて重要です。

2022年12月 日本小児神経学会広報交流委員会QA部会

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