日本小児神経学会

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Last Update:2022年12月14日

小児神経Q&A

Q39:背中(腰)に軟らかい瘤がある赤ちゃんはどういう病気なのでしょうか?

背中の柔らかい瘤は二分脊椎症(または神経管閉鎖不全症)と呼ばれる病気が考えられます。この病気は、妊娠初期におこり、脳や脊髄の元になる「神経管」の先天異常です。二分脊椎症は、大きく顕在性と潜在性に分けられます。顕在性では背部の皮膚が一部欠損し、欠損部に露出した脊髄から髄液が漏れます。水頭症などの脳の異常を伴うことが多く、脊髄髄膜瘤とも呼ばれます。潜在性では、背部は正常もしくはほぼ正常の皮膚で覆われ、脊髄は見えません。
お子さんの背中の軟らかい瘤は、おそらく脂肪組織のかたまり(皮下脂肪腫)でしょう。この脂肪腫が脊髄とつながっていれば、脊髄脂肪腫と呼ばれる潜在性二分脊椎症が考えられます。
また、瘤をつくらない皮膚症状をきっかけに潜在性二分脊椎症が見つかることがあります。注意する皮膚症状は、多毛、血管腫、母班(色素班)、皮膚小陥凹または皮膚洞(皮膚表面の小さな穴)、皮膚瘢痕(たばこによる火傷に見える)、人尾(human tail)または皮膚付属器(caudal appendage)とよばれるソーセージ様の皮膚突起物、臀部の左右差や臀裂(おしりの割れ目)の歪み、などです。
この病気では、赤ちゃんの時に神経症状が無くても、成長に伴い下肢の運動知覚障害や足部変形(内反足など)、排尿排便障害、などの神経症状(脊髄繋留症候群と呼ばれている)が出現することがあり、注意が必要です。潜在性二分脊椎症の約7割に皮膚症状があると言われますが、皮膚症状のない潜在性二分脊椎症もあります。また、鎖肛など肛門直腸奇形の子どもには、潜在性二分脊椎症が多いと報告されています。
いずれにしても、背部(腰)に見慣れない皮膚症状を見つけたら、子どもを診療する脳神経外科医や小児神経科医に診てもらいましょう。

2022年12月 日本小児神経学会広報交流委員会QA部会

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