日本小児神経学会

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小児神経科医を目指す方へメッセージ

 小児神経科医を目指す方へメッセージ

小児神経科医として活躍中の先輩方からのメッセージを紹介します。

1  育児は育自 

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女性 医科大学准教授

小児神経分野で扱う疾患は、熱性けいれんなどの急性疾患、てんかんなどの慢性発作性疾患、神経筋疾患などの運動障害、神経発達症などの精神疾患など多岐に渡りますが、総じて 「こどものこころとからだの発達に寄り添う」診療・研究が行われています。男女共同参画の推進とともに、男性の子育てへの参加も増えていますが、まだまだ小児科の外来へは母親と一緒に受診するこどもたちが圧倒的に多いのが現状です。女性が家庭と仕事を両立させながらキャリア形成を行うことは日本の未来へ向けての課題ですし、小児神経はそのような女性医師の活躍が期待される分野です。

私は初期研修及び後期研修でたっぷり小児科の臨床を学んだ後、大学院進学をきっかけに基礎研究へ進み、シナプスの生理機能をモデルマウスを用いて解析する実験などを行っていました。ちょうどこの時期に出産・育児が重なりましたが、当直のない生活でこどもとの時間を取ることが出来ました。海外留学を終えて帰国後に臨床に戻りましたが、基礎研究で培った素地や自分自身の子育て経験などが現在の診療に大きく役立っていると感じます。

育児は育自と言いますが、病気や障害を持つお子さんを育てているお母様と協力して患者さんの診療を進めていくことで、女性医師としての幅が広がり、現場に必要な人材になっていくことは請け合いです。若手女性医師の皆さん、小児神経分野で未来へ向けての活躍を期待しています。

2  小児神経の分野には様々な選択肢あり  

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女性 地方国立病院勤務

小児神経では急性脳症などの救急医療から慢性期の生活管理,神経発達症の支援など,携わる疾患は多岐にわたります.また,診断や治療が大きく進歩している分野でもあり,研究に関しても大きな魅力があります.このように小児神経の分野には様々な選択肢がありますので,女性医師,若手医師の皆さんにとっては出産,子育てなどのライフステージにあわせた働き方ができ,キャリアを継続して積み重ねることも可能です.

私自身も出産,育児休暇を経てから小児神経専門医を取得しました.周りにも時短勤務や育児時間を利用しながら活躍されている先生方がたくさんいます.小児には成人にはない成長,発達という特有の時期があり,親になって初めてわかる視点や想いもたくさんありますので,出産,子育ての経験は小児を診る上で必ずプラスになると思います.最新の知見を得るための日々の勉強は大変ですが,患者さんやご家族に寄り添った医療を提供することにやりがいを感じます.

少しでも興味のある先生はぜひお近くの小児神経医にご相談ください!きっと,自分に合った活躍の場が見つけられる分野だと思います.

3  小児神経の分野では多職種連携が大切  

 

doctor03男性 リハビリテーション病院勤務

私はリハビリテーション専門病院に勤務する小児神経科医です。小児神経分野で扱う疾患は多岐にわたるため、小児科の他分野はもちろん、他科の医師とも十分に連携をとって診療にあたる必要があります。また、ひとりひとりのお子さんの「やろうと思えばできる能力(Capacity)」だけでなく「日常生活で実際にしている能力(Performance)」を向上させるためには、セラピスト(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)、臨床心理士や看護師など他の医療関係者との連携、さらに保健師、保育士、教師など医療職以外の多職種との連携が大切であることを日々実感しています。多職種とうまく連携することができれば、医師だけで介入するよりもはるかに多くの成果を患者家族に還元し、かつ日常生活に汎化することができますので、医師としての個人的なスキルアップとともに、他職種の専門性や強みを理解、尊重し、チーム全体としての成果、成長を目指すマインドが大切です。技術の進歩や時代の変化に伴い、疾患の原因や治療法、家族の価値観も多様化する現代の医療療育現場において、正しい診断に基づく適切な治療ゴールをチームで共有し、患者家族が納得できる治療法を多職種で共に決定していくプロセス(共同意思決定)において、小児神経科医が果たす役割は大きく、やりがいのある分野だと思います。

多職種チームの一員として、患者家族のQOL向上のためにともに働きましょう!

4  小児神経科医ならではの貢献  

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女性 若手大学病院勤務

小児科医になりたての頃、私はNICUを退院した赤ちゃん達が成長・発達していく過程をフォローすることに喜びを感じていました。しかし一方で、思うように発達が進まない子どもを目の前にして、何もできない自分に無力感を感じ、小児神経科医を志しました。

早産や新生児仮死、新生児発作を経験した児は、神経発達症やてんかんを有するリスクが高いことが知られています。新生児期の早い段階から頭部MRIや脳波、超音波検査などのツールを用いて予後を推察し、その子の最善の発達を促すための適切なフォローアップにつなげていくことが重要です。新生児から小児、青年期まで幅広く診療する小児神経分野では、様々な経験を通じて多くの知識を得ることができ、それを未来ある子ども達に直接還元できる魅力があります。また、成長して症状が明らかになる前に何が起こっているのか、早期から何かできることはないのだろうか、といった未解決の問題もたくさんあり、興味は尽きません。

小児神経の分野は多岐にわたり、働き方も多様です。そのため、各々の視点で興味を持つことができ、それをさらに発展させやすいと感じています。皆さんも、是非小児神経に足を踏み入れて、一緒に楽しいことを見つけましょう!

5  小児神経科医を目指す方へ

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男性 シドニーで研究留学中

私たち小児神経科医が深く関わる「発達」はこどもの持つ最もこどもらしい側面のひとつです。こどもがひとつできることが増えるたびに、わかることがひとつ増えるたびに、親や保護者は他に代え難い大きな喜びを感じます。こどもたちが自身にとって最大限の発達ができるために、それぞれの健康や環境を守り支えていくことはわたしたち小児神経科医にとって重要な役割です。この役割に大きな価値があり意義深いことは疑いの余地がなく、小児神経科医という仕事の持つ大きな魅力です。

小児神経科医としての活躍の場は臨床だけに留まりません。小児神経領域はまだ解明されていない事柄が数多く、その発展に多くの注目が集まる領域でもあります。こどもたちの持つ脳の不思議を解き明かし、守るための研究は世界中で盛んです。私は現在、より多くの経験値を積むためにシドニーへ留学しています。家族で過ごす海外の生活は苦労も多いものの、オーストラリアの広々として温暖・温厚な環境で子育てができ、仕事面の充実と合わせて貴重な経験ができています。

これを読まれた方の中で小児神経領域に興味のある方がいらっしゃれば、お近くの専門医へぜひお声掛けください。きっとあなたのキャリアのお力になれます。

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