日本小児神経学会

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第51回小児神経学セミナーイントロダクション

Last Update:2021年10月29日

イントロダクション 講師敬称略)


ウイルス性中枢神経感染症 UP-TO-DATE 
吉良 龍太郎(福岡市立こども病院 小児神経科)

中枢神経感染症に対して、直ちに主要病原体の網羅的な髄液迅速診断を行い、自己免疫性脳炎も念頭に置いた治療戦略を立てる時代がやってきています。これまでに診たことのない新興・再興感染症に対しても我々は直ちに対応できるよう準備をしておく必要があります。本講座ではウイルス性中枢神経感染症の診療に必要な最新の基礎知識を概説し、それを基に小児のCOVID-19関連神経疾患についても考察してみたいと思います。

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先天性トキソプラズマ&サイトメガロウイルス感染症
~当事者(親)と診療医からのメッセージ
森内 浩幸(長崎大学病院 小児科)

先天性CMV感染症の診断のための核酸増幅法が保険収載され、症候性感染児に対するバルガンシクロビル療法の保険適応を目指した医師主導治験が現在国内で行われている。しかし先天性トキソプラズマ症に関しては、まだ診断法も治療法も国内では整備されていない。どちらも胎児の感染を予防することが最も重要だが、そのための啓発はまだ十分とは言えない。当事者と医療者のそれぞれの立場から、啓発の重要性を訴えたい。

先天性トキソプラズマ&サイトメガロウイルス感染症患者会「トーチの会」

母子感染症の中でも、特に日本では認識されていないトキソプラズマやサイトメガロウイルスに関する知識を世の中に広め、悲しい思いをする親子を減らしたいという思いで、当事者の母親たちが2012年に立ち上げた患者会

渡邊 智美 「トーチの会」代表
五十嵐 美和

母子感染症は子どもに障害を与えるだけでなく、母親にわが子に障がいを与えたという一生消えることのない自責の念と後悔を刻み付ける残酷な病気である。しかし妊婦だけでなく、医療従事者ですら認識が低いために、本当なら予防もしくは早期発見・早期治療が出来たはずなのに…という悲劇が数多く繰り返されている。そこで今回は、当事者の体験を通して見えた問題点をまとめた。

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コロナ禍と子どもたち:発達障害とゲーム・ネット・スマホ
~デジタル機器との付き合い方を考える~
吉川 徹(愛知県医療療育総合センター中央病院 こどものこころ科-児童精神科)

現代の子どもたちにとって様々なデジタル機器の利用は日常生活の欠かせない一部となっている。しかし子ども達がインターネットやデジタルゲームを使用することには、様々なリスクがあることも確かである。特に自閉スペクトラム症や注意欠如多動症、限局性学習症などの発達障害のある子ども達にとって、デジタル機器はその生活の支えともなる一方で、使用に伴うリスクも上昇する。

近年、デジタルゲームの使用については、それが嗜癖を生じると考えられ始めており、2013年のアメリカ精神医学会によるDSM-5には、「今後の研究のための病態」としてインターネットゲーム障害が記載された。また2022年に発効予定のICD-11にはゲーム行動症が採用されている。しかしデジタルゲームへの嗜癖を疾病として扱うべきかという点については、専門家の間でも議論が続いている状況である。またインターネットの嗜癖に関しては問題のあるインターネット使用(Problematic Internet Use)をはじめとしたいくつかの概念が提唱されているが、コンセンサスの得られた診断基準などは整備されていない。
また臨床的には、デジタルゲームやインターネットの過剰な使用が認められる場合は、抑うつや不安、自閉スペクトラム症や注意欠如多動症などの併存する精神疾患が見られることが多く、また不登校や引きこもりなどの状態像を呈することも多い。介入の焦点として、ゲームやインターネットの嗜癖が強調されすぎることによって、主たる問題が覆い隠されてしまう場合もあり、注意が必要である。

こうした嗜癖的な使用を予防していくという観点からは、大人から子どもへのICT(情報通信技術)リテラシーの獲得の支援が重要となる。デジタルゲームなどの使用を「おしまい」にするスキルを、大人が関わりながら獲得していくこと、子どもと大人が相談しながら遵守することができる約束を作り、実績を積み重ねていくことが望ましい。また現実世界での趣味を増やしたり、友人や家族と共に過ごす活動を楽しめた経験を積み重ねていくことを通じて、子どもが孤立することを避けることが、嗜癖に対する重要な防御因子となりうる。また嗜癖的な状況が生じた場合には、デジタルゲームやインターネットの使用を巡って、子どもと養育者が対立を深めることを避けるとともに、リアルの世界での健康な接点を回復していくための援助が必要となる。

本セミナーでは子どもたちがうまくデジタル機器と付き合っていくために、大人にできることについて考えてみたい。

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ウイルス感染と脳神経外科
林 俊哲(宮城県立こども病院 脳神経外科)

Focal cerebral angiopathy(FCA)は小児脳梗塞の凡そ35%程を占めるとされその発症にウイルス感染が関与している可能性が示唆されている.                            
本発表ではFCAの病態と診断/治療方針について概説し,鑑別が必要な小児もやもや病などの疾患との診断/治療上の差異について考察する.                            
さらに,乳児検診において知っておいて欲しい脳神経外科的な注意点についての情報提供も行いたい.                            

 


 

 

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AAVベクターが変える難病治療
村松 慎一(自治医科大学オープンイノベーションセンター 神経遺伝子治療 内科学講座 神経内科学部門)

アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを応用した遺伝子治療が急速に発展しています。AAVベクターは、神経細胞や肝細胞に効率よく遺伝子を導入し長期に発現可能です。血液脳関門を通過するAAV9ベクターは、脊髄性筋萎縮症1型の遺伝子治療薬として承認されています。これまで難治であった多くの小児神経疾患に対して遺伝子治療が開発されてきており、日常臨床において遺伝子治療が第一選択となる日も近いと期待されます。

 

 

 

 


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遺伝子改変マウスモデルを用いたエンテロウイルス71の病原性の研究   
小池 智(東京都医学総合研究所 疾患制御研究分野ウイルス感染プロジェクト)

エンテロウイルス71は手足口病の原因ウイルスとして知られているが、稀に重篤な中枢神経合併症を引き起こす。このウイルスの受容体ヒトScavenger receptor B2をマウスで発現させることにより、ヒトの中枢神経感染を再現するモデル動物を作製することができた。この動物モデルを用いたウイルスの毒力変化をもたらす変異やウイルスの神経指向性の原因を探る研究について紹介する。

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BonusTrack!
教育委員による「ウイルス感染症の画像」
城所 博之(名古屋大学医学部附属病院 小児科)

今年の小児神経学セミナーのボーナストラックとして、教育委員一同による「ウイルス感染症の画像」をお届けいたします。教育委員が交代で症例提示をし、解説を加えてくださっています。Webだからこそできる企画です。知っておくべき画像所見のポイントを学び、随所にちりばめられたトリビアも御堪能頂ければと思います。

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