日本小児神経学会

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Last Update:2019年5月1日

小児神経Q&A

Q58:Rasmussen症候群(ラスムッセン症候群、ラスムッセン脳炎・脳症)はどのような病気なのでしょうか?

 かぜなどの感染症に伴って、ウイルスを退治するために活性化された細胞傷害性T細胞(リンパ球の一つ)が、ずっと活性化したままで、脳の中にも入り込んで、神経細胞を攻撃する、免疫介在性の難治なてんかん発作を主体とする病気です。
 1958年にRasmussenらが、術前には予期し得なかった限局性脳炎の組織所見を有する難治部分てんかん手術症例を3例報告したのが本症候群研究の始まりで、最初の報告者の名前が付いています。
 発病年齢は平均8.3±10.1歳で小児期に多いですが、成人でも発病することがあります。多くの症例がけいれんなどのてんかん発作で発病しますが、感染症(25%)や日本脳炎などのワクチン接種(13%)から2週間くらいして起こることがあります。典型例では、初期は月に1回から数回の発作で普通のてんかん(焦点性てんかん)と同じような経過ですが、徐々にてんかん発作の頻度が増加していきます。発病から数ヵ月しますと発作が毎日のようになり、一側の指や手全体がぴくぴくずっとしているといった状態(持続性部分てんかんとも言います)になる場合が多いです。次第に発作の多い身体の部分の麻痺が明らかになり、一側の手足が使いづらくなります。知的な面でも発達が伸びなくなってきます。発作がひどくなって数か月すると、片麻痺や知的障害などが回復できない状況になり、青年期では精神症状も見られることがあります。最終的には、発作は徐々にですが減少します。

 以下のような特徴で診断します(参考 難病情報センター)。
1)感染の後などに、2)徐々に増加してくるてんかん発作、3)一側の半球障害に基づく片麻痺や視野障害、4)脳波の一側半球の徐波、5)MRIの特徴的病変(消退を繰り返したり場所が変化したり)、6)髄液中の細胞傷害性T細胞の出すGranzyme B濃度、7)髄液の神経自己抗体(グルタミン酸受容体抗体など)の存在。

 高橋幸利(静岡てんかん・神経医療センター)2019年5月1日改変

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