日本小児神経学会

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Last Update:2019年5月1日

小児神経Q&A

Q31:重度障害を持つ子どもの睡眠で注意することはあるでしょうか?

 睡眠のコントロールは脳によりなされるので、脳に重度の障害を持つお子さんは必然的に睡眠の問題が起こりやすくなります。また脳の問題に加えて、体を動かすことの少なさや刺激に対する反応の弱さから日中の活動性が低くなり、時に細切れに眠ってしまったりするため、それが夜に眠れない原因となってしまいます。さらに重度障害を持つお子さんの特殊性として、運動麻痺により寝返りなどで自分の好む姿勢をとることができない(筋緊張の亢進)が精神的な興奮や身体的な痛みを引き起こす、夜間の呼吸の問題(いびきや無呼吸など)が伴いやすい、といった多くの問題があり、その全てが入りにくさや夜間の目覚めやすさに結びつきます。
 脳の問題は改善が難しいので、その他の原因をできるだけ取り除くことが家でも可能な注意点・対処法ということになります。
 まず大切なのは睡眠環境を整えることです。室温、騒音などへの配慮はもちろんですが、重要なのは光の環境です。日中、特に朝起こしたらしっかりと明るい光を浴びてもらいましょう。そして眠るべき時間には光を落とし、明暗環境のメリハリをつけてあげましょう。眠る時の姿勢や筋緊張への対応も重要です。定期的な体位交換や、筋緊張が強くなりにくい姿勢のとらせかたなどにも配慮しましょう。眠る時の姿勢は呼吸の問題にも大きく影響します。もし理学療法などを受けられているなら療法士さんと相談するのも良いと思います。
 また、夜に眠らせること以上に日中での関わりを大切にする意識を持ちましょう。起きているべき時間帯のポイントは昼食前と夕食前です。ここで楽しく関わってあげることにより覚醒を促しましょう。特に夕方眠ってしまって夕食の時間がずれていくようでは夜に眠れなくても当たり前です。睡眠のことで悩んだ時には一日全体のことをリズムとして考え、調整していく考え方が大切です。

田中 肇(北海道立旭川肢体不自由児総合療育センター)2019年5月1日改変

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