日本小児神経学会

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Last Update:2019年5月13日

小児神経Q&A

Q80:自閉症について教えてください
②発達障害はどのように診断されますか

 自閉症に限らず発達障害の診断は支援とセットでなされるべきです。

 支援(特別な配慮)が必要であることの根拠として診断が必要なのです。発達障害とは発達の特性が原因となって、現在の社会生活が生き難い状況にあるということを指す概念です。診断は現在そのような状況にあるという証明です。人が物事を学習していくプロセスには体験したことを1つ1つ正確に記憶するというやり方と、概念として理解して納得するというやり方があります。多くの人は両方を組み合わせて使います(多数派)が、一方の能力がとても強いために、そのやり方だけで十分な人(少数派)が一部います。少数派であったとしても本人はそれで支障はないのですが、世の中は多数派が過ごし易いように設計されているので、少数派にとって生き難いものになってしまいます。
 例えば、自閉症の子どもは体験したことをそのまま正確に記憶出来る能力はとても優れていますが、体験を概念化し応用するのが苦手な少数派です。従って、自閉症の子どもは言語や概念で出来上がっているこの世の中はとても生き難いものなのです。多数派は数が多いだけですし、少数派は数が少ないだけなのですが、しばしば勘違いされて、多数派が正しくて少数派は間違っているとか、多数派が幸せで少数派は不幸であるという風に考えられがちです。多数派に追いつくことが大切だという考え方も大きな勘違いなのです。少数派は多数派むけに設計された世の中では生き難いのは事実ですが、それだけで多数派に近づくために努力しなければならないのではなく、少数派の特性を活かして世の中で暮らせるような独自のスキルをつけていくことが大切です。

 このように少数派が多数派向けに設計された世の中で生き難い仕組みを理解することが、発達障害の理解と支援にとても大切であり、発達的に少数派であることのお墨付きが診断なのです。

 林   隆(西川医院発達診療部発達障害研究センター)2019年5月1日改変

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