日本小児神経学会

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Last Update:2019年6月3日

小児神経Q&A

Q51:ポンペ病の新しい治療法はどんな治療法でしょうか?

 2007年6月からポンペ病に対する酵素補充療法が開始になりました。ポンペ病はまれな種類の筋ジストロフィーで、約4万人に1人の頻度(1万4千人-30万人に1人の範囲)で発生する常染色体劣性遺伝病です。細胞の中でグリコーゲンを分解する酵素(酸性アルファグルコシダーゼ)が欠損し、骨格筋、心筋、平滑筋にグリコーゲンが蓄積して、進行性の筋ジストロフィーの症状を示します。
 乳児期発病(身体が柔らかく、運動の発達が遅れ、哺乳が難しく、よく肺炎をおこす、汗が多く、体重が増えないなどの症状で発病し、肝臓が大きくなり、心不全を起こす)、乳児期以降発病(歩き方がおかしくなる、立ち上がるときに膝に手をついて立ち上がる、朝の頭痛を訴える夜の呼吸機能の障害)など、発病年齢は幼児期から中年まで大きな幅があります。
 この疾患は細胞の中の酵素の欠損ですから、細胞の中に酵素を補ってあげれば治療が可能になります。遺伝子組み替えにより、筋肉の細胞がその酵素を取り込むように工夫した製剤が開発されました。この製剤を点滴で血液の中に入れると筋肉のグリコーゲンの沈着がなくなり、心臓の機能、筋肉の力が回復し、正常に歩けるレベルまで回復します。
 酵素補充療法はこのような画期的な治療法で、2014年5月時点で、日本では90名弱がこの治療を受けています。

大野耕策(おおのこども発達クリニック)2019年5月1日改変

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