日本小児神経学会

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Last Update:2022年12月14日

小児神経Q&A

Q37:こどもの頭が歪んでいるのは病気でしょうか?

頭の丸い形はいくつかの骨がつながってでき、骨同士のつながる部分を頭蓋縫合と呼びます。頭の骨はこの部分を中心に成長し、脳の発育に伴って頭の骨が丸く大きくなります。頭の変形がすべて病気ではなく、変形は寝ぐせによることが多く、座ったり立ったりして横になっている時間が短くなれば変形はよくなります。しかし病的な場合もあります。頭蓋骨縫合早期癒合症という頭の骨の病気では生まれる前から頭蓋縫合での骨の成長が悪いため頭の形がいびつに変形し、生まれて後も成長とともにそれが進行していきます。病気による頭の変形には、

  1. 横から見るとおでこや後頭部が飛び出し、前から見ると頭の左右の幅が狭い
  2. 横から見ると頭は前後に短く、前から見るとおでこは前にでっぱらず平らである
  3. 頭を上からみると丸いはずのおでこが船のへさきのように中央部が前にとび出して角ばる
  4. 頭を上からみると片方のおでこが出っぱり反対のおでこが平らで、おでこが平らになったほうの眼が開きにくい
  5. 後頭部が平らである
  6. 頭全体が小さく横からみれば頭の上のほうが尖っている

などがあります。この病気はまれで頭の形を見ただけでは診断が難しいため、頭の骨のX線検査やCTを行ってこの病気かどうか診断しますが、変形が軽いと診断が難しい例があります。
頭の骨が十分に成長せず変形が進めば、成長していく脳が狭い頭の骨の中に押し込められて脳の発育が妨げられ発達が遅れることがあります。2)と6)の頭の変形は頭の骨全体が小さく脳に影響がでやすいとされています。変形の程度が軽いと治療は必要ありませんが、程度が強いと頭の骨を広げ頭の形を正常に近づける手術が必要となります。病気の縫合の部分を取り除く症状緩和的な手術やヘルメットを頭につけて形を良くする方法があります。しかし脳の圧迫が長く続いて脳の発達が遅れれば、手術を行っても回復しにくいため、生まれてから数ヵ月から1歳頃の赤ちゃんの時期に手術が必要で、多くの場合手術に輸血が必要で、頭の変形を直すのは難しいため手術によって形が正常になると期待しすぎないように、とご家族に説明します。また、手術は病気の根本的な原因を治すことにはなりません。成長とともに再手術が必要となる場合があります。原因は明らかではありませんが、手術がうまくいっても発達が遅れる例があります。

2022年12月 日本小児神経学会広報交流委員会QA部会

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