日本小児神経学会

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Last Update:2019年5月13日

小児神経Q&A

Q20:熱性けいれんはどのような病気ですか?

 子どもの脳は熱に敏感で、風邪などの熱でもけいれん発作を起こすことがあります。一般に生後6か月から5歳までに、発熱時(通常は38度以上)に起きるけいれん発作を熱性けいれんと呼びます。日本では5%以上の子どもが熱性けいれんを起こし、欧米よりも頻度が高いと言われます。熱性けいれんは熱の上がり際に多く、突然意識がなくなり、白目を向いて、身体をそらせるように硬くしたり、手足をガクガク震わせ、顔色が悪くなります。ただし、体の力が抜けて、ボーッとして意識がなくなるだけの場合もあります。
 子どもがけいれん発作を起こすと保護者の方などもびっくりしますが、大事なことはパニックにならずに落ち着くことです。ほとんどの熱性けいれんは5分以内に自然に止まってきます。まず、倒れたり物にぶつかってけがをしないように、安全な場所に横に寝かせましょう。吐くこともあり、顔や体を横向きにして、息がつまらないようにしましょう。口にものを噛ませるのは、呼吸をできなくする可能性があるのでやってはいけません。可能なら発作が始まった時刻や続いた時間、けいれん発作中の様子(手足のがくがくは左右両方か片方か、目はどちらを向いていたか、など)を覚えておくと、あとで役に立ちます。5分以上けいれん発作が続く場合を「けいれん重積状態(または、てんかん重積状態)」と呼び、救急車などで病院に搬送する必要がある状態です。
 熱性けいれんで大事なことは、髄膜炎、急性脳症など熱性けいれん以外の重い病気と区別することです。初めての熱性けいれんでしたら、救急外来など医療機関を受診しましょう。これまでに熱性けいれんを起こしたことがある子が再度の熱性けいれんを起こした場合なら、5分以内にけいれん発作がおさまればご自宅で様子を見ていただくこともあります。その場合も意識が1時間以内にもどってくるかには注意しましょう。
 はじめて熱性けいれんを起こしても、再び熱性けいれんを起こす子どもは約30%のみです。熱性けいれんを繰り返しやすい子どもでは予防のために発熱時にけいれん予防の坐薬を使うことがあります。ただし約3分の2の子どもでは再発がありませんので、多くの子どもでは薬は必要ないことを知っておきましょう。
 熱性けいれん診療ガイドライン2015が、本ウェブサイト内に掲載されていますので、詳しく知りたい方は参考にして下さい。 

夏目 淳(名古屋大学大学院医学系研究科障害児(者)医療学)2019 5月1日改変

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