日本小児神経学会

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Last Update:2023年3月1日

小児神経Q&A

Q93:デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の新しい治療法について教えてください。

DMDは、ジストロフィン遺伝子変異によってジストロフィンタンパク質を作ることができないことによって、骨格筋が壊れやすくなり、筋力低下をもたらす筋疾患です。DMDは、5歳頃に運動能力のピークをむかえ、10歳頃に歩行困難となります。進行すると重篤な運動機能障害だけではなく、呼吸筋や心筋の障害も加わり、嚥下障害、消化管障害が引き起こされ、呼吸不全や心不全により生命が脅かされます。近年、呼吸管理や心不全管理等の医療技術の進歩もあり、平均寿命は延長しています。DMDを対象に活発に治療薬の開発が行われており、別項で説明しましたような標準的診療を基盤に新しい薬剤を使用することによってDMDの予後が大きく変わることが期待されます。ここで解説していますエクソンスキッピング治療以外にも、炎症抑制治療、リードスルー治療、ウイルスを用いた遺伝子治療についても国内外で臨床試験が行われておりその結果が待たれます。

エクソンスキッピング治療

ジストロフィン遺伝子エクソン53を標的としたエクソンスキッピング治療薬であるビルトラルセン(商品名ビルテプソ)が2020年に承認されました。遺伝子検査によってエクソン43-52、45-52、47-52、48-52、49-52、50-52、52というパターンのエクソン欠失を持っておられる患者さんがこの治療の対象となります。DMDの患者さんのうちおよそ10%程度がこの治療の対象となります。週1回1時間かけて点滴を行っていく必要があります。エクソン53 スキッピングにより治療可能な患者に限定される治療です。この薬剤はエクソン53 部分に結合することでエクソン53 をスキップさせ、正常より短いものの、機能するジストロフィンタンパクを発現させることが期待されます。(参考となるサイト 筋ジストロフィー研究班ウェブサイトhttps://mdcst.jp/md/dmdbmd/viltepso/)また、エクソン45やエクソン44など別なエクソン欠失を対象としたものも臨床試験が行われています。

(2022年1月 日本小児神経学会広報交流委員会QA部会)

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